先週我が家で、田中優さんを囲んでエネルギー問題についての話しをしてもらいました。ほんとうに目から鱗のことばかりでしたが、その話しの尽きるところは、もう石油経済の時代は終わったということでしょう。世界各国がつぎつぎとほかに選択余地のない自然エネルギー開発に乗り出しているのに、エネルギー自給率ゼロにちかい日本がのほほんと相変わらず石油輸入と原子力を頼りにしようとしていることは、ほとんどクレージーとしか言えません。
優さんによると、電力料金は産業用だと使えば使うほど安くなるように設定されているそうです。これでは企業はなるべくたくさん電力を使ってコストを低減させようとするのは当たり前です。
ヨーロッパの国々では、その逆で、産業が使うほどコスト高になるように設定されているので、企業はどうしても省エネ対策しなければならないようになっているそうです。
さて、ロバート・ケネディ・ジュニアは故ロバート・ケネディの息子で、環境団体で活躍している弁護士です。いつも時期を得たかれのするどい論評はさすがです。アメリカの貴重な論客であり、ビデオ「テロリストは誰?」にでもちょっとでてきます。
かれのエネルギー問題についての記事がヴァニティフェアに載っていました。
それによると;以下はその要約です。
200年前まで、イギリスの経済は奴隷という安価で豊富なエネルギー源でなりたっていて、国内総生産の4分の1が奴隷貿易からのものでした。しかし、人道主義運動による奴隷制度廃止が議会でも叫ばれて、奴隷貿易廃止を巡る論議が1年間つづきました。奴隷貿易に関わる利権保護論者たちは、廃止したら経済恐慌になると警告したからです。
結局、イギリスは人道的な選択をして奴隷貿易を廃止したのです。しかし、保護主義者が警告した経済の崩壊は起こりませんでした。
そして奴隷制度を廃止して分かったことは、そのようなゼロコスト労働力がいかに非効率であり、創造性と生産性が低いということでした。足枷をはめられていたのは奴隷たちだけでなく、イギリス経済だったのです。
これが新しいエネルギー源を求める動きを生み、イギリス経済の大きな発展を築く産業革命へとつながったのです。
今日のアメリカ経済は、まったく非効率な炭素エネルギー中毒にかかっていることは明らかです。毎日10億ドルの借金をして外国の石油を買うことがドル暴落の原因です。石炭・石油会社に年間1兆ドル以上の補助金を国民はつぎこんできました。炭素依存が国の経済力を蝕み、道徳的権威を失い、外国への威信と影響力を低下させ、国家安全保障を危うくし、国民の健康と国土を損なったのです。
経済の脱炭素化によってその効果はすぐ得られることをわかっています。スウェーデンは2006年に、すべての化石燃料と核エネルギーを2020年までに段階的に廃止することを決めました。1991年にスウェーデン政府が炭素税(今は1トン150ドル)を導入して以来、何千の企業家が競って風力、太陽光、潮汐、ウッドチップ、農業廃棄物、生ゴミを使った新エネルギー開発に取り組み、経済成長率はアメリカの3倍になりました。
1970年代のアイスランドはエネルギーの80%を石炭石油の輸入でまかなうヨーローッパでもっとも貧しい国のひとつでしたが、今では、100%エネルギー自給国です。家庭暖房の90%は地熱エネルギーで、残りの電力は水力発電からです。今日、IMFはアイスランドを世界でもっとも豊かな国の4位にランクしています。過去には外国からの投資を陳情しなければならなかった国に、今ではその安価でクリーンなエネルギーを求めて企業が列をなしています。
アメリカは、アイスランドやスウェーデンに比べればはるかに大きなエネルギー源を持っています。風力だけでも、ノースダコタとカンザスとテキサスだけで、全米の総電力を賄える発電が可能です。また世界第2位の地熱源もあります。太陽光で言えば、南西部砂漠地域の19%を使ってソーラー発電設備を設置すれば、アメリカの全土の電力を賄えると言う研究もあります。
ロバート・ケネディは、アメリカが自然エネルギーをもっと社会に活用できるよう法改正をするべきだと主張しています。
翻って、日本ではこのような論議がほとんど主要メディアではされません。早く田中優さんが注目されるよう
な世間の意識向上が望まれます。
ヴァニティフェアの記事はここです。
奴隷制度について調べていてGoogleからこのブログにたどりつきました。非常に興味深かく読ませていただきました。ただ、
返信削除>これが新しいエネルギー源を求める動きを生み、イギリス経済の大きな発展を築く産業革命へとつながった
という意見は明らかに違うと思います。
イギリスの奴隷貿易が廃止されたのは1807年であり、イギリス帝国全土の奴隷廃止は1833年です。一方、産業革命はイギリスがフランスとの7年戦争に勝利(1763)し、世界のヘゲモニーを握った後、1770年代から1830年代にかけて起こったものとされています。
これまでアジアなどから輸入していた綿布・茶・砂糖・陶器を自前で大量供給すれば莫大な利益を得る状況と手に入れたイギリスが、綿布などは自国の工場で、気候条件の必要な砂糖や茶は植民地のプランテーションで生産するという、近代世界システムを築いたのが始まりです。
新しいエネルギー源を求めて産業革命が起きたというのはある意味正しいですが、それは奴隷ではなく、木炭などの植物性燃料では生産が追いつかなくなった結果、石炭エネルギーに切り替えたというのが正しいと思います。
奴隷に関して言えば、プランテーション労働生産性の向上が求められるようになったからです。それはイギリス本国での産業革命によって誕生した賃金労働者市場が生活革命によって活発化したことが挙げられます。
もしご存知のことなら申し訳ありません。アメリカの大物論客が、しかも奴隷制の本場だった国の人間がこの程度の陳腐な歴史観を振りかざしているのかと思うと失笑せずにおれませんでした。失礼いたします。
匿名さん(なんでもいいですから今度からは名前をつけてくださいね)
返信削除参考になるコメントをありがとうございます。たしかにイギリスの産業革命の一般的な歴史的背景から見れば、ごもっともな意見だと思います。ただ、この記事はエネルギーという視点から見た産業革命と奴隷貿易や制度廃止の関連を書いているものです。奴隷貿易産業は当時のイギリスのGDPの4分の1を占めていたそうですね。論点はいかに奴隷制が非効率で、非生産性だったのかというところです。既得権をもっている奴隷貿易業者たちの反対を押し切って、新しいエネルギー獲得への道を歩みはじめるイギリスのひとつの象徴的な革命的進歩であったことは確かだと思われます。