木曜日, 6月 12, 2008

クシニッチ議員の弾劾決議案

アメリカ合州国連邦下院議員でオハイオ州選出の民主党議員デニス・クシニッチが火曜日(10日)に、ブッシュ大統領の弾劾を求める決議法案を下院に提出しました。われらがデニス、やったねと大拍手です。

これは、日本でいえば内閣不信任案に相当するもの、いやそれ以上のインパクトがある出来事なんです。でも、アメリカのメインストリームメディアはMSNBC以外はほぼ沈黙。もちろんアメリカの報道を垂れ流すだけの理解能力しかない日本のマスコミがなにも論評するはずもありません。

しかし、インターネット上ではよくやったという記事が飛び交っています。マイケル・ムーアもトップニュースでこの成り行きをホームページで伝えています。



このブッシュ大統領弾劾決議法案の主な内容は、ブッシュ大統領が偽りの理由で戦争を始めたこと、国内法と国際法に反してイラクに侵略したこと、兵士たちに充分な物資を提供しなかったこと、政治的理由で被害状況を隠したこと、不法にアメリカ国民と外国人を勾留したこと、さらに、地球温暖化対策、選挙権、国民健康保険、ハリケーン・カトリーナ対策などをとりあげて、それらが憲法違反だと主張しています。

この弾劾決議案文は58ページもあって、これをデニスが下院議会で5時間もかけて読み上げました

そのブッシュへの嫌疑は35条もあるんですが、その要項はこんな感じです;

1条:対イラク戦争の根拠を正当化させるために秘密裏にプロパガンダ工作をしたこと。

2条:911事件を不当に、組織的にかつ犯罪的意図をもって利用し、イラクを安全保障上の脅威と関連づけ、偽って侵略戦争を正当化したこと。

3条:アメリカ国民と議会メンバーを欺いて、イラクが大量破壊兵器を所有しているかのように信じ込まさせ、戦争の根拠を捏造したこと。

4条:イラクがアメリカ合州国への差し迫った脅威であるかのように、アメリカ国民と議会メンバーを欺いて信じ込ませたこと。

5条:侵略戦争を秘密裏に始めるために不法に出費したこと。

6条:議会決議HJRes114の必要条件に違反してイラクを侵略したこと。

7条:宣戦布告なしにイラクに侵略したこと。

8条:国連憲章に違反して独立国家であるイラクを侵略したこと。

9条:兵士に防弾チョッキと装甲車を与えなかったこと。

10条:政治的な目的でアメリカ軍兵士の死傷者数を偽ったこと。

11条:イラクに恒久的なアメリカ軍基地をつくったこと。

12条:イラクの天然資源を支配するために戦争を始めたこと。

13条:イラクと他に国々に関してエネルギー開発と軍事政策のための秘密部隊をつくったこと。

14条:重罪隠匿、極秘情報の不正使用と不正公開、および中央情報局(CIA)の秘密エージェント、ヴァレリー・プレーム・ウィルソン問題における司法妨害。

15条:イラクでの犯罪コントラクター(請負い業者)の告発を免除したこと。

16条:イラクとアメリカのコントラクター(請負い業者)に関連して、アメリカの税金を誤って浪費したこと。

17条:不正な勾留:正当なる告発なしにアメリカ市民と外国人捕虜を無期限に勾留したこと。

18条:公式な政策として、アフガニスタン、イラク、その他の地域の捕虜に対して、秘密裏に拷問を容認し、奨励したこと。

19条:引き渡し:ひとびとを拉致し、その意思に反して、拷問を行う国や他の国の秘密基地に引き渡したこと。

20条:子どもたちを投獄したこと。

21条:議会とアメリカ国民にイランの脅威を偽って煽り、イラン政府を転覆させる目的でイラン国内のテロ集団を支援したこと。

22条:秘密の法律を作成したこと。

23条:ポス・コミテータス法(注:民警団法/1878年にアメリカで成立した連邦法で、国内の治安維持に陸軍、空軍、州兵を動員することを禁じたもの)の違反。

24条:裁判所の捜索令状なしに、また法律や合衆国憲法修正第4条(注:不法な捜索や押収の禁止)に違反してアメリカ市民をスパイしたこと。

25条:電話会社を使って、憲法に違反するアメリカ市民のプライベートな電話番号とEメールアドレスのデータベースを不正につくらせたこと。

26条:サイニング・ステートメント(大統領署名声明)によって法律違反の意向を表明したこと。

27条:議会召喚状に応じないこと、また元のスタッフに応じないよう指示したこと。

28条:自由で公正な選挙への干渉、司法行政の腐敗。

29条:1965年の選挙権法の違反謀略。

30条:議会とアメリカ国民を欺いてメディケア(国民保険)をなくそうとしたこと。

31条:カトリーナ;予想されていたハリケーン・カトリーナ災害への対策を怠ったこと。社会的緊急時への対応を怠ったこと。

32条:議会とアメリカ国民に事実と異なる説明をし、地球温暖化問題に対応する活動を組織的に妨害したこと。

33条:911事件以前にあったアメリカへのテロ行為に関するハイレベルの情報警告に対して、くりかえし無視し対応することを怠ったこと。

34条:911事件の調査に対する妨害。

35条:911事件で最初に救援活動したひとたちの健康を脅かしたこと。

どうですか、これらのどれかひとつでさえ弾劾に値すると思いますね。

さて、この決議案がいまどうなっているのかと言うと、議会の司法委員会に送られて公聴会が開かれるか審議されているところです。この司法委員会の議長がジョン・コンヤーズ議員で、彼の判断に任されています。

実はデニスは去年の11月にもチェイニー副大統領の弾劾決議案を提出しているのですが、この時はやはりジョン・コンヤーズ議長がなにもしなかったので、法案は死滅しています。今回も同様に無視される可能性が高いのですが、前回と違って議員たちの意識もだいぶ変化してきているし、なんといっても市民の関心の高さが影響する可能性があります。デニスは今回だめだったら1ヶ月後にまたやると言っています。今回のは58ページでしたが、本当はその倍の量あるそうで、今度は全部読むといってますから、10時間かかることになります。デニスはここが正念場と思ってブッシュ大統領との対決に臨んだのでしょう。

勇敢なひとです。そして、とてもこころが温かく愛に溢れるひとです。

4 件のコメント:

  1. 時同じくしてこのような出版があったそうです。

    『What Happened: Inside the Bush White House and Washington's Culture of Deception』

    「“元”報道官スコット・マクレランは、リチャード・クラークと同じように暴露本を発表し、同じようにブッシュ政権批判を開始したのである。」

    下記サイト参照してください。

    「マクレラン元大統領報道官が語るブッシュ政権の犯罪」
    http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2008/06/post_8897.html

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  2. tolioさん

    ありがとうございます。みんな結局名声と金儲けなんですね。

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  3. この弾劾決議案が11日に下院で可決されていたのは本当ですか?全く報道されていないように思うのですが。
    http://www.asyura2.com/08/wara3/msg/136.html

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  4. akiraさん

    下院で可決されたのは、決議案そのものではありません。決議案を司法委員会で審議することを決定しただけです。じつはこれは政略的な意味があって、司法委員会に送られると大体その法案は死案になるというのが相場なのです。だから今回多数の共和党議員が賛成したのです。デニスは今回は決議案が葬られるを承知なので、またやるよと言っているのです。

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