木曜日, 7月 24, 2008

ココペリの語り

「六ヶ所村通信no.4」のGIF

今回の東京平和映画祭と安房平和映画祭でもとりあげられたテーマのひとつは”核”問題でした。東京と館山で鎌仲ひとみ監督をゲストに迎え、「六ヶ所村通信no.4」が上映されました。鎌仲さんは、六ヶ所再処理工場の問題にやっと若い人たちの関心が芽生えてきて、実際に行動する若者たちが出て来たことを報告したかったと言います。映画の中では、自分たちの海が汚染されることに疑問を抱いたサーファーたちが、"WAVEMENT"という六ヶ所までのツアーを計画します。

放射能で汚染されることをたぶんもっとも敏感に肌で感じるサーファーたちは、サーフィンのメッカ、ハワイでも行動を開始しました。サーフライダーズファンデーションのメンバーである鴨川の上田真寿夫君は先週ハワイ大学での「六ヶ所村ラプソディー」上映会開催のためにホノルルに行ってきました。そのことが現地のテレビニュースでも放送されています。
これがそのサイトです。)

放射能汚染についての最大で、もっとも根本的な問題は、低レベル放射能の危険性に関する科学的で政治的な合意がいまだないという事実です。政府と原子力業界そしてそれらに依存する科学者たちは、口を揃えて、放射能は薄めて環境に流せば人体に影響がない(安全)と主張してきました。これは、低レベル放射能は健康を害しないという意味です。

これに反して、低レベル放射能でも危険である、どんなに薄めても安全という基準(しきい値)などない、しかもその汚染は未来へ延々とつづくと主張する少数派のひとたちがいます。
そのなかのひとりで、劣化ウランの健康に与える影響を国際的に訴えているローレン・モレさんが、低レベル放射能の妊婦に与える影響を明らかにしたあるインディアン出身の若い女性科学者の話を送ってくれました。

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「環境中ウラニウムに汚染されるひとびと:増加する不妊症と生殖器ガンの危険」
                         

Leuren JPG

ローレン・モレ
守護人と世話人

「ホピのためにナバホは大地を守ってくれている。われわれは、かれらに行って欲しくない。かれらにとってもここは聖なる土地だ。自然の神が怒るまえに去らなければいけないのは、白人たちだ。偉大なるスピリットによって、われわれはこの大地の世話人をまかされた。われわれはそれを祈りと儀式で守っている。それをお前たちは露天掘りとウラニウムの採鉱屑と発電所で汚し、レイプし、破壊した・・聖なる大地を!そしていま、最後の数少ないインディアンたちを追い出そうとしている、お前たちの汚れた仕事のために」

                            トーマス・バニヤッカ(ホピ)
ココペリの語り

Kokopelli JPG

(ココペリは豊穣の神、アナサジの岩絵(グリフ)に描かれている古代の背中の曲がった笛吹き。赤子の誕生、農業、狩猟動物の繁殖を司る神で、南西部インディアンから崇拝されている)

Kokopelli JPG

ウラニウム採掘でひどく汚染されたナバホ・リザベーション(インディアン保留地)に育った少女が、アマサニ、祖母を乳ガンで失ったとき、9歳だった。彼女の母親もその後2回も乳ガンを患っていた。ステファニー・レイモンド・ウィッシュが北アリゾナ大学で分子生物学者になろうと決心したとき、乳ガンの根本原因を見つけることにその研究を捧げようと思った。

ルード ドゥー ナズィヒイ ー ”癒されない痛み”

レイモンド・ウィッシュは、ニューメキシコ州腫瘍記録データがナバホ族レザベーション(居留地)のニューメキシコ編にあることを発見した。それによると、こどもの生殖器ガンが全米平均より17倍増加していることを示していた。レイモンド・ウィッシュについて「ガンの跡を追って」を書いたジャーナリストのウィリアム女史は、”これらはホルモン系に関係する極めて稀なガン”と報告している。

また別の1970年から1982年の記録データでは、これらのガンがニューメキシコのすべての先住アメリカ人の間で2.5倍増加していた。1981年のデータは、ウラニウム鉱山尾鉱(クズ)と各家族の異常出産例とが密接に関連している可能性を示していた。乳ガン(図7)は、心臓疾患につぐナバホ女性の2番目のキラーである。

1970年以来ニューメキシコインディアンの子宮および卵巣ガンが2倍から3倍に増加しているが、白人やヒスパニック系には何の変化が無かった。これが米国保健福祉省( U.S. Health and Human Services)を促し、ナバホ保健局とニューメキシコ州当局が共同で腎臓病の調査研究をする予算を与えた。

両者は1,300人のナバホ族と160カ所の飲料用井戸を調べ、病気のデータと飲料水中の汚染物質(ウラニウム、ヒ素など)分析をまとめることになっている。まだ4分の1の井戸を調査したばかりだが、放棄された鉱山から0.8キロメートル以内に住んでいる人たちから腎臓病と糖尿病を予測する著しいデータが出ている。

これは、地域のウラニウム汚染源が、多くの家族が自分たちの井戸があるナバホレザベーション区域の地下水を汚染していることを示唆している。人口の多い市街地区域に住む白人やヒスパニック系が使っている市営水道のおかげで、非インディアンでは子宮ガン発生率が低いことが説明できる。

Breast Cancer JPG

アーネスト・スターングラス博士は、半透膜フィルターシステムを使えば水中のウラニウムなどの重金属やほかの汚染物質を除けるだろうと勧めているが、これは1件あたり500ドルの政府の負担になる。博士は、汚染されている先住アメリカ人たちにこの浄水システムを提供する方が、アメリカ政府にとって、公共衛生調査研究費や恒常的なウラニウム汚染による高額な医療費を負担するよりもはるかに安くつくだろうと主張する。

ハツカネズミの研究と新しい成果

レイモンド・ウィッシュが2008年5月に博士号を修得したとき、彼女は、ウラニウムがエストロゲンホルモンかく乱物質(ディスラプター)であり不妊だけでなく乳ガン、卵巣がん、子宮がんの致命的な原因であることを明らかにする画期的な論文を共著ですでに発表していた。彼女と研究者たちは、米国環境庁水質基準30ピコキューリー/リットル(あるいは約1ベクレル)以下、言い換えると、米政府の考える最小の健康リスクレベルの劣化ウランで汚染された飲料水をネズミに与えた。その結果、

「ウラニウムの入った水を飲んだネズミは、一次卵胞の選別的減少、子宮体重の増加、子宮内管腔上皮細胞高位の増加、膣開口部の拡大、持続的膣細胞角質化を含むエストロゲン反応を示した。抗エストロゲンICI182,780を同時に投与するとウラニウムや合成エストロゲン、ジエチルスチルベストロールへの反応を抑えることができた。さらに、ウラニウム汚染水を飲んだ母ネズミはたくさんの通常の子ネズミを産んだが、それら一次卵胞は普通の飲料水を飲んだコントロールのネズミよりも著しく少なかった」

かれらの下した結論は;

「アメリカ南西部フォーコーナー地域のコロラド高原で数十年間行われてきたウラニウム採掘と処理のために、ウラニウム濃縮とこれらの研究で用いられた汚染経路は環境的に関連している。ウラニウムが内分泌かく乱化学物質であることをわれわれのデータは結論づけており、環境ウラニウムに汚染されている人びとは不妊や生殖器ガンのリスクが増えるので、追跡調査が必要である」

アンドレア・ゴア、オースティンのテキサス大学の神経内分泌学者で元国立科学ファンデーション顧問は、これを画期的な研究だと考えている;

「これは微妙な科学です。(ダイヤーとレイモンドーウィッシュの)仕事は、ほかの優れた研究室グループとも一致しています。内分泌かく乱の分野はそのメカニズムがいまだすべて解明されていないので、批判を受けますが、その結果は本当です。だからこそ動物実験研究が重要なのです。研究室の動物で見られる反応は人間でも起こりうるのです。なぜなら、私たちはともにまったく同じホルモンを持っているからです。エストロゲン受容体(レセプター)もよく似ています」

地球規模の人口減少、人類破滅の凶器

Ovulation JPG

1945年以来、カリフォルニア大学と米国核兵器研究所はほかの核をもつ州と共同で、惑星地球とその大気を、その生物学的影響が未知であるウラニウムと核分裂物質で汚染しつくしてきた。

これは非常に重要なことだ。なぜなら低レベルのウラニウム汚染は、それがたとえEPA(米国環境庁)の飲料水基準以下であっても、ほんのわずかでもエストロゲンやホルモンかく乱因子になるからである。それは、単に多くの生物種のメスだけにではなく、地球上に影響することを意味している。

レイモンド・ウィッシュが明らかにしたことは、ひとつの生物学的システム(生殖系)のある影響であるが、それは人間や動物たちの非常に複雑なシステムのうちのより大きな相関的なシステムの一部分にすぎない。彼女の研究が示唆することは、これから何世代にわたって、恒常的な低レベル放射線の被曝によって、不妊と女性の生殖器ガンが増加し、未来の世代の生殖能力が低下していくだろうという予言である。

糖尿病で治療をほとんど受けられない妊婦はひ弱な新生児を産むので、糖尿病とウラニウム被曝との関係も重要である。ウラニウムが、膵臓とまた別のホルモンであるインシュリンの生成および働きに与える影響によって、ほかの内蔵システムも大きなダメージを受ける。環境中のウラニウムは、すでに世界中で急増する糖尿病の要因になっている。WHO(世界保健機構)は世界の糖尿病発生率が2030年までに10倍増加するだろうと予想している。

動物たちも環境ウラニウム汚染の影響を受けている。かれらは人間たちと同じホルモンと類似のエストロゲン受容体をもっているからである。6,500年前の恐竜絶滅以来のかつてない生物種の大量絶滅減少がこの惑星で起きつつある。それを示す徴候の例はどこにでもある。たとえば、報道されたロスアンゼルス市の飲料水中のウラニウムレベルの増加があるが、イラクとアフガニスタンでの劣化ウラン弾爆撃からの影響で2007年だけでも2倍に増えた。

2006年のイラクとアフガニスタンの爆撃から7~9日後にイギリスの大気中から劣化ウランが検出されている。タスマニアでは糖尿病が急増していると報告されている。1993年からタスマニアンデビルの数が、恐ろしい口内ガンで半減しているが、それはアーストラリアのウラニウム採掘と精錬がともに倍増した時期である。南半球の対気流で放射能ダストはほんの数日でタスマニアに到達する。

放射能はほかのもとは異なる。消すこともできないし、除くこともできない。つねに放射し、殺し続ける兵器だ。妊婦、胎児、こどもたちが、この世界人類滅亡兵器の主な標的である。カリフォルニア大学こそ、未だ終わっていない原子爆弾計画のマンハッタン計画の本拠地である。それは永遠にその名を残すであろう・・「世界を毒で汚染した大学」として。

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