水曜日, 4月 15, 2009

ソマリアの”海賊”

新聞やテレビが報道しない事実はたくさんありますが、今世界と日本を騒がしているソマリア沖の海賊問題などは、その最たる物でしょう。

日本は今月初めソマリア沖に”海賊”からの民間船の保護を名目に自衛隊を派遣することを閣議決定しましたね。

ソマリアのJPG

でも、海賊=悪者対自衛隊を含めた国際連合軍=良い者といったまことに簡単で冒険物語でお馴染みの図式は、もちろん、つねに自衛隊出動の口実を捜している政府と防衛省タカ派が何も知らない体制べったりのマスコミに書かせたプロパガンダ報道の一面です。そして、北朝鮮の問題と同様に、これを鵜呑みにしている国民も責任があると思います。

ソマリアの置かれて来た状況を知れば、本当の海賊たちはどちらかいうことが分かるでしょう。

ソマリアのJPG

ソマリアの悲劇は、アフリカ最貧国の一つであっただけでなく、1991年以来内戦状態のため国家として機能していないため、他国からの不法な侵入・略奪によってさらに深刻なものになっています。

その最大のものは、1970年代から始まっている漁場略奪(フィッシング・パイラシー)と最近の不法有毒物質海上投棄です。

ソマリアが内戦で混乱しているすきを狙って、豊かな漁場を求める先進国のトロール船団がソマリア領海内に侵入してごっそり魚を盗んでいるのです。その主な”海賊”たちはスペイン、イタリア、イギリス、ロシア、ギリシャ、ノルウェーそして韓国、フィリピン、中国、台湾の船籍の大型漁船です。昔ながらの零細沿岸漁業に頼るソマリア漁民たちには勝ち目がありません。

ソマリアのJPG

そして、もっと深刻なのが、産業廃棄物である有毒化学物質のソマリア沖での不法投棄です。この中には核廃棄物も含まれているのです。

勝手に自分たちの海の入って密猟し、しかも不法投棄していく外国船に対して、地元民たちが抵抗するのは当然なことでしょう。不法侵入する外国船が地元漁民のカヌーなどの小さな漁船を脅し、発砲までもするという暴力行為が長い間つづいたので、地元民たちは沿岸警備隊を組織したのです。それが、先進諸国で“海賊”と呼ばれている正体です。

もちろんソマリアの市民団体が国連やEUを通じて直訴していますが、先進国はこれまでまったく無視の態度です。

そして今回の日本の自衛隊を含めた20カ国以上による”海賊退治”のための軍艦派遣になったのです。

実際は、本当の海賊たちを護衛しているのに過ぎません。

今、各国の派遣軍艦がソマリア沖で取り締まらなければならないのは、こうした漁場荒らしと有毒物質の不法投棄をしている先進国側の”海賊”たちです。

そして、何よりも困窮しているソマリア国民に援助が必要でしょう。

2 件のコメント:

  1. いつもたのしく読まさせていただいております。

    ソマリアの記事で最近気になったのは、イルカが何千もの群れを作って、ソマリア沖に集まったことです。
    これは何かを私たちに伝えようとしているのではないかと探っていたところ、玄さんの記事を見て、「そうか! このことだったのか!」 と納得いたしました。
    私のブログにイルカの写真とソマリアの記事を合わせて書かせていただきました。
    http://plaza.rakuten.co.jp/sophiarein/diary/200904200000/

    お時間がありました時に、お読みいただけると幸いです。
    レイン

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  2. うみぼうず4/21/2009 6:47 午後

    いつも楽しく拝見しております。
    ソマリアの件おっしゃるとおりの原因があるでしょう。
    ただ現実に我が国は資源も少なく、貿易で成り立っている国です。無防備の商船が命綱のシーレーンで攻撃されている事実がある以上自衛隊派遣は止むを得ないと思います。
    一般の漁師と言いつつロケットランチャーを持ち、GPSを使用して獲物を追跡し、身代金の受け渡しまで行わせる連携プレーは組織されている犯罪集団と言われてもしかたがないと思います。
    批判的な気持ちはわかりますが。では我が国はどうすればいいとお考えでしょうか。
    派遣がベストな方法とは思いませんが代案がない批判は読んでいてあまり気持ちの良い物ではありません。

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