土曜日, 10月 29, 2011

福島・会津若松の土壌汚染

ふくしま集団疎開裁判」はこの7月、ECRR(欧州放射線リスク委員会)科学議長のクリス・バズビー博士を日本に招いて、福島や東京などで講演会と記者会見を開催しました。その際、バズビー博士は講演会で訪れた会津若松市の土壌を持ち帰りましたが、その分析測定結果を報告していただいたので、ここに掲載します。

原子炉にしか存在しない放射性元素ウラン235の存在を示唆するこのデータを見ると、やはりという感じは否めません。

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福島第一原発から100kmにある会津若松市の表土サンプルの高/低解像度ガンマスペクトロメーター分析結果が示す原子炉からのウラン汚染の存在

グリーン・オーディット・バズビー研究所 英国・アベリィストウィ

クリス・バズビー博士

2011年7月、会津若松市内の日本キリスト教団若松栄町教会の駐車場の脇から私自身が表土(厚 み約 1 cm、約 200 g)を採取した。会津若松は福島第一原発の西方100 kmにある。ロシア製 SOSNA ツインチェンバー・ガイガーカウンターを用いて計測した地上 10 cm でのバックグラウンド放射線 量(自然放射線を含む)は 0.5~0.7 μSv/h であった。

分析用に持ち帰った採取表土の一部分はストロンチウム90の分析用に送り、残りは低解像度な らびに高解像度のガンマスペクトロメーターで長時間測定した。

その結果、以下に示すとおり多数の核種が存在した。図 1 は、ウラン娘核種トリウム234とトリウム231 に関連する低エネルギー領域での集中を示す高解像度スペクトラムである。表 1 は、検出された放射性核種とその線量を示す。

サンプルのJPG

この会津若松の土壌サンプルのスペクトラムから、セシウム 134 とセシウム 137 の存在が示され た。アメリシウム 241 とネプツニウム 239 は両者ともこの測定時間内での近似検出限界である 10Bq/kg 以下だったために検出されなかった(表2)。

サンプルのJPG

結論

セシウム 137 特有の線量は 8,000Bq/kg をわずかに超えるものだった。これは表土の厚さ 1cm に ついて 128kBq/m2 の表面汚染があることを示している。またこれは、7 月に現地でポータブル型 MCA2 インチ・ヨウ化ナトリウム検出器によって検出されたセシウム 137 の測定値 130kBq/m2 にほぼ一致 する。これに加え、ほぼ同量のセシウム 134 があり、合わせて 260,000Bq/m2 になる。このことから 理論的に、放射線量として 0.83μSv/h が導かれるが、これはガイガーカウンターによる実際の測 定値と近似するものである。

ここで興味深いことは、天然の土壌サンプルではあり得ないウラン 235 の崩壊娘核種であるトリ ウム 231 のピークが見られることである。天然のサンプル中ではウラン 238 とウラン 235 の比率は 138:1 である。しかしこのサンプルではほぼ 3:1 であるため、高濃度のウランがあることを示して いる。もちろん、ウラン 235 は福島第一原発 3 号炉の MOX 燃料の成分であるプルトニウム 239 の崩 壊生成物である。プルトニウム 239 はガンマスペクトロメーターでは検出できない。これらのピー クが弱いため(図 1)、この比率を基にこの結論を導くことには注意を必要とするが、ここでは余り にも多量のウランの存在が示されており非常に気がかりなことである。これをさらに確認するため にサンプルは質量分析(ICPMS)に送られることになっている。総ウラン濃度も非常に高く 112Bq/kg (予想値は約 10~20Bq/kg)である。ウラン汚染に関してはさらなる調査が必要である。

サンプルのJPG


2011年10月26日 訳:森田 玄 監修:生井兵冶

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