アメリカのブッシュ政権がイランとの戦争を準備しているとさまざまな論評が飛び交っていますが、今日のガーディアン紙に掲載されたノーム・チョムスキーの記事に興味ある視点が書いてありました。
ブッシュ政権とメディアは、イランのアフマディネジャド大統領を悪の権化のように非難しています。例えば、彼がイスラエルは存在すべきではないと言ったという記事が大きくセンセーショナルに西側メディアでは報道されています。
ところが、イランの大統領という立場は、私たちが一般に考えている大統領とは、ずいぶん違うことを理解しないといけません。これはイスラム教国家の政治文化を理解しないと分からないことですが、イスラム教では、アラーの神の教えを日常社会に実践することがもっとも崇高な生き方とされています。イスラム社会では政教分離などという思考はありません。したがって、政府とは、それ(神の教え)を手助けする機関であって、もっとも権威を持つのはイスラム教の最高組織なのです。
現在その最高位にいるアヤトラ・アリ・カメネイ師が最高権力者と言っていいでしょう。そのカメネイ師が、イスラエルがパレスティナとの紛争問題に国際的なコンセンサス案を受け入れるのであれば、イスラエルとアラブ諸国との関係正常化に務めると、イスラエルの存在を認める発言を公式にしているのです。
ところが、西側のメディアはいっさいこのことは報道しないで、アフマディネジャド大統領の挑発的な言葉ばかりを取り上げています。
これらの相反する発言は、イランの政治内情を考えれば推測できることですが、たぶん経済不振で国内問題を抱えるイラン政府は国民に対してはタカ派的スタンスを取らざるを得ないのではないでしょうか。政治外交レベルと宗教外交レベルの二枚舌外交でバランスをとっているのでしょう。イラン人はなかなかしたたかです。
事実イランは2003年に、経済制裁を課して敵視外交をつづけるアメリカ政府に対し、核問題やイスラエル・パレスティナ問題などすべての懸案事項に対して交渉をする用意があるとワシントンにアプローチしているのです。ところが、ブッシュ政権はこの提案を握り潰してしまいました。
2004年には、今度はEUがイランとの交渉で、イランが核濃縮プロジェクトを放棄する代わりに、EUは、アメリカ・イスラエルのイラン攻撃を阻止するという一種の安全保障協定を取り決めました。しかし、あきらかにアメリカの圧力でこの約束は反古にされ、イランは核濃縮を再開してしまいました。
チョムスキーは、イランの核兵器開発を本当に避けたいと思うのなら、このEUとイランとの取り決めをワシントンに納得させ、実質的な外交交渉のテーブルにつかせることが大事だと締めくくっています。そうすることで、イランが国際経済の仲間入りを果たすことができると。
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