一昨日、アメリカの大きな環境団体である天然資源保護委員会(Natural Resources Defense Council/NRDC)からうれしいニュースが届いていました。メキシコ政府がこのラグーンを含む109,000エーカー(1億3千万坪)という広大な土地を保護地域として提供することを決定したというのです。この団体は絶滅が危惧される動物を保護する運動で世界的に知られていますが、長年のコククジラ保護運動がやっと実ったわけです。これでクジラたちもひとまず一安心。
バハカリフォルニアは以前あることで関わり私にもとても馴染みのあるところなのです。
1990年ころ、私はゴルフ場問題グローバルネットワークという文字通りの国際環境団体の世話人をやっていて、日本はもとより海外のゴルフ場開発問題に関わっていました。おかげで、東南アジアやハワイ、アメリカ、ヨーロッパを旅し自然豊かな地域を訪れ、観光開発問題に取り組む活動家や知識人、そして自然と共存している地域の人たちと交遊できたことは一生の財産になっています。
ある日、ロスアンゼルスのプロ・エステロスという環境団体から1通の手紙をもらいました。「メキシコのバハカリフォルニアに日本の鹿児島にある岩崎産業というディベロッパーが、広大な土地を買収しメガゴルフリゾートを開発しようとしている。当地は生態系の聖域で、その広大なエスチュアリ(河口潟)は渡り鳥の貴重な生息地で、とくにラグーンはコククジラの繁殖場でもある。もし、ここが開発されたらそれは全生態系にとって壊滅的な結果をもたらすであろう。私たちはメキシコ政府をはじめ国際的にこの開発計画を止めるために運動しているが、どうか日本人にもこのことを知ってもらい協力してほしい」という内容でした。たまたまロスアンゼルに行く用事があったので、この環境団体の人たちと会って詳しい情報を手に入れることができました。もちろんバハカリフォルニアのことを知ったのはそれが初めてでした。たまたま兄がメキシコ在住だったので、現地やメキシコ政府側の状況なども調べてもらうことができました。
当時の日本はバブル経済で、まさにネコも杓子も土地投機に狂騒していた時代でしたね。私はさっそくゴルフ場開発問題に関わっている鹿児島の仲間にこの岩崎産業という会社を調べてもらい、同時に新聞社やニュースレターにこの情報を流しました。驚いたことに、この会社は奄美大島でゴルフ場開発をしようとしてすでに現地で大騒ぎになっていることがわかりました。いわゆる悪質な乱開発業者だったのです。なんとか朝日新聞の記者が記事にしてくれました。しかし、当時は日本列島総リゾート開発ブームで、なんとゴルフ場開発計画だけでも1000カ所もあったのです。じつは私が住む鴨川市でも5カ所のゴルフ場とマリーナ建設計画が持ち上がっていて(私が環境問題に関わるようになったきっかけがこれでした)、全国そのような似たり寄ったりの状況でしたので、バハカリフォルニアのことは実際にはそれほど人びとの関心を呼ぶことはなかったようでした。あの時代は、今から思うと、環境を守るよりも、バブル経済でいかにお金を儲けるかということの方にひとびとの心が捉えられていたようです。やがてバブル経済が弾け、幸いなことにこの岩崎産業がどうやら経営的に危機に陥ったようで、奄美大島とバハカリフォルニアの開発計画から手を引きました。
実は今回のニュースで知ったことですが、その後あの三菱がここに大製塩工場を建設しようとしていたのです。つまり日本企業が10数年間もの間、この世界で唯一残されたコククジラの生息地を脅かし続けていたのです。日本人がまだまだエコノミックアニマルと思われているのは仕方ないでしょうね。
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