春光さん |
さっそくドンキーミルアートセンターのサマーアートスクールで子どもたちにアートを教えたのが地元の新聞で紹介されました。
まず彼女の独創であるピールアート作品をご覧下さい。
春光さんは器用にカッターナイフを使って、話しているあいだにミカンの皮をあっという間に変身させていきます。
「私がこうしようと思っているのではないのよ。ミカンちゃんがこうして欲しいと言ってくるので、ただその通りに指を動かしているだけなの」
彼女のアートはまさに自然のアートとも言えるでしょう。
一般にアートとは、その人(アーティスト)の考え、アイデア、メッセージなど個人の生き方を作品に投影させたものと言えます。
ところが春光さんの作品は、オブジェ(作品=果物)がアイデアやメッセージを作者に与えているわけです。そこには作者の人間的存在感や思惑はほとんど感じられません。
その意味で、ピールアートは従来のアートの概念を変えています。ある人が、これは自然の延長のアートだと評しましたが、適格な指摘だと思います。
私たちのアートという概念はそもそも明治以降に西洋から導入されたもので、同時にもたらされた西洋科学とともに日本人の自然に対する見方に大きく影響を与えたことはよく知られています。それは自然を客観視することで、結果的に人間を自然から離れた存在として見るようになったのです。
この話をこのままつづけると、東洋思想と西洋思想との根本的違いという思想文化論になってしまうので、これ以上踏み込むことはしません。
春光さんのピールアートが画期的で、とくにいまの時代に大きな意味をもつと私が思うのは、それが日本人の本来もつ自然と合体したスピリチュアル(霊的)な精神性を呼び起こすからです。
美とは、つくりあげるようなものではなく本来そこにあるもので、人間ができることがあるとすれば、それを発見することだけなのかもしれません。
これは最近イギリスのオークションで話題になった100年前の日本の写真です。浮世絵のような世界が現実にあったんですね。この100年間に私たちが失ったものはもう取り返しがつかないのでしょうか。
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