24日からほんの数日ですが、サンフランシスコに格安チケットで行ってきました。折しも感謝祭ホリデーで、いつもは学生たちで賑わう滞在先のバークレーはしーんとしていました。木々がすっかり色づいてとても鮮やかに街を飾っていたのが印象的でした。もうすっかりクリスマスムードです。
当地の新聞サンフランシスコ・クロニクルでトップニュースになっていたのが、先週、世界を震撼させたロシアの元KGBスパイ、アレキサンダー・リトビネンコの暗殺事件です。さて、暗殺に使われたとされる放射性物質ポロニウム210についてはいろいろと議論が沸騰しています。NYタイムズにタバコに含まれるポロニウムについての記事がありました。それによると、この事件でもっともうろたえているのはアメリカのタバコ業界だというのです。じつは1960年代からすでに相当量のポロニウムがタバコに入っている事実をタバコ業界は知っていたというのです。昨日、放射線科学者のローザリー・バーテルが、ポロニウムはウラニウムとラドンガスの崩壊生成物で、リン酸塩と強い親和性があるので、リン酸化学肥料に多く含まれていると教えてくれました。タバコの葉には大気中の汚染物質を吸着する部分があるそうで、リン酸肥料(化学肥料)を多く使うタバコ栽培ではラドンガスを吸着しそれがポロニウムに崩壊すると考えられます。
実際にタバコにどのくらいのポロニウムが含まれているかというと、アメリカンタバコカンパニーが1968年に極秘調査した結果によると、タバコ1本につき.04pCi(ピコキューリー)のポロニウム210を吸うことになるといいます。フィルターはまったく役に立たない事もわかったそうです。当然ですが。
ところで、ポロニウムは、キューリー夫人が発見した最初の放射性物質で当初はラジウムと呼ばれていました。放射線量単位のキューリーはそこからきています。
これは非常に微量なようですが、半減期138日のポロニウム210は肺がんを起こすのに十分なアルファ粒子を放出するのでプルトニウムよりも危険だと言えます。
一日1箱半のスモーカーは、毎日約300回のレントゲン照射を胸に浴びていることになるそうです。本当かしら?
問題は、このNYタイムズ記事ではポロニウムがいったいどうやってタバコに混入したのかということに口を濁していることです。リン酸肥料に含まれているから土中から吸収されたと推測していますが、ローザリー・バーテルが指摘しているように、ウラニウムから崩壊したラドンガスがタバコの葉に吸収され、さらに崩壊してポロニウム210になったと考えられるのです。つまり、大気中のウラニウムが元凶なのです。ということは、この60年間、数多くの核実験と世界中の原発そして最近の戦争で使われた劣化ウラン兵器によって世界中で拡散したFallout(放射性降下物)が、まわりまわってタバコに入ったのです。このことは誰も口に出しませんね。本当の問題はタバコだけのことではないからです。
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