ハワイの滞在もあと数日になりました。ハワイがどのようにアメリカに合併されたのか、その真相を知る人はアメリカや地元ハワイでもあまり多くありません。最近出版された"Overthrow"(ステファン・キンザー著)という本がその詳しい過程を教えてくれています。
19世紀末まで、ハワイ諸島(当時はサンドウィッチ諸島と呼ばれていた)がハワイ王朝が支配する独立国だったことはよく知られています。そこにアメリカのニューイングランド地域から、キリスト教布教にたくさんの宣教師(ミッショナリー)たちがやって来ました。彼らとその子どもたちは、ハワイ先住民たちがやっていたサトウキビ栽培が大きな利益を生むことに目をつけ、巨大なプランテーションを作り上げて、アメリカに輸出することで巨大な富を築きました。
ところが1980年代はじめにアメリカが砂糖輸入に高関税を課したため、ハワイの砂糖は事実上売れなくなってしまい、プランテーションのオーナーたち(宣教師たち)は財産を失う危機に瀕し大騒ぎになりました。
そこで彼らはワシントンに出向き、ときのベンジャミン・ハリソン大統領に直訴して、ハワイ王朝への反乱を支持するよう取り付けました。ハワイに戻った「革命支持者たち」(プランテーション宣教師たち)は、アメリカ大使とアメリカ海軍と示し合わせて、王政の政情不安定という口実を唱えて勝手に新政府宣言を行い、ハワイ市民の安全擁護のためという理由で海兵隊を招き入れてしまいました。当時のハワイ王朝の女王が対抗手段を取る前に、アメリカ政府は即このハワイ新政府を承認してしまったため、事実上ハワイ王朝政府は消滅し、ハワイはアメリカ軍に擁護されたプランテーションのオーナーたちが牛耳る新しい独立国となったのです。
しかし、この革命騒ぎの真相がワシントンに明らかにされたことから、連邦議会は強引にハワイをアメリカ合衆国の植民地にするハリソン大統領のハワイ併合法案を却下してしまいます。ハワイはその後数年間独立国として存在せざるを得ませんでした。というのは、次の民主党グローバー・クローブランド大統領が反帝国主義者でハワイ併合に反対して協定を破棄してしまったからです。そして,次の共和党大統領マッキンレーの代になると、フィリピンを取ろうとするアメリカが、スペイン・アメリカ戦争を始めていて、ハワイはカリフォルニアとフィリピンとの中間に位置する重要軍事拠点とみなされ、革命事件から5年経ってやっとハワイは併合されることになります。
この"Overthrow"(転覆)という本は、アメリカが関わった政府転覆の仕方には、ひとつのパターンがあることを主張しています。それは、通常考えられている、軍が何らかのかたちで介入して、あとからアメリカのビジネスが入って行くと言うのではなく、その逆だと言っています。ハワイ、キューバ、フィリピン、グアテマラ、チリ、ホンデュラス、南ベトナム、アフガニスタン、イラク、パナマ、イラン,プエルトリコを例にとってアメリカがどのように外国政府を転覆させてきたか、その構造を分析し、その結果として、それがどのように世界情勢に影響を与えてきたか述べています。
金曜日, 3月 09, 2007
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