愛媛県の松山にドーム建設の仕事でこの週末いってきました。
アメリカ・オレゴンにオレゴンドームというドームの会社がありますが、私はもう20年近くその日本エージェントになっています。普段は、ほとんどこのビジネスには積極的にかかわっていないのですが(ほかのことで手一杯!)、どうしてもドームを建てたいという方のためにお手伝いさせていただいています。これまでに、全国で10棟近いドーム建設にかかわってきました。20世紀のレオナルド・ダヴィンチといわれるバックミンスター・フラーが開発したジオデシックドームは、まだまだ日本では数が少ないですが、本格的なドームが初めて日本に紹介された20年前から、私もその魅力にとりつかれたひとりです。じつは、このドームを初めて日本で建てたのが友人のジャズミュージシャン、ジョン海山ネプチューンでした。ジョンの紹介でオレゴンドームのオーナーと親しくなり、ついでに日本の代理人になった次第です。
衣食住というライフスタイルの基本にこだわる人には、なにか共通のものがあるようです。こういう私も、鴨川で築200年を越える茅葺き農家を直し直し住んでいますが、建て売り住宅やマンションでは満足できない人たちは、自己の住処はたぶん自分の延長みたいなものと考えているのでしょう。おもしろいことにドームに興味を持つひとにも、ある一種独特の雰囲気が共通して感じられるのです。なかなか言葉に表しにくいのですが、自然派ロマンティシズムとでも言ったらいいでしょうか。
なによりうれしいことは、ドームに興味をもつ人とは初対面でも昔からの親しい友人のようにたちどころに垣根がなくなり、即ドームの話しはもちろんのこと、あらゆる話題に忌憚なく会話が弾み、しかも「そうなんですよ」とお互いうなずき合うケースが多いことです。普段でもドームなんて聴いたこともないという人がほとんどですから、「え?あなたもドームを建てたい?なに、フラーのファンですって?」などということになれば、それこそ何時間でも話しはつきなくなるのです。
まあ、それほどドームは奥が深いとも言えますね。
まあ、はじめてドームを見た人は、ちょっとぎょっとするのかもしれません。普段見慣れている家というイメージからはほど遠いですからね。でも、世界を見渡せばドーム式家屋というのは珍しいものではありません。近代建築は四角いのが通常ですが、第三世界や先住民の村に行くと丸い家はごく当たり前です。エスキモー(イヌイット)のイグルーもそうですね。わたしたちの祖先の縄文人たちも丸い縦穴式住居に住んでいたではありませんか。
いまから50年前、数学家でもあったフラーは、もっとも無駄のないそして安定した構造物ということで球体に行きつき、さらにそれを純粋に数学と幾何学を応用して平面で割面して三角形で構成されるジオデシックドームを考えついたわけです。
無駄がないとは、まず建築材の量があります。ドームは柱がなく、壁と屋根が一体になっているために、その分全体が軽くなり、従来の建造物より30%少ない材料で建ちます。ドームの構造材料が少なくて済むということは、それだけ森林資源への負荷が少ないわけです。また、オレゴンドームの構造材は基本的に2x4、いわゆるツーバイフォー材だけでできています。つまり、古いおおきな木は伐採せず、30〜40年で育成された森から伐りだされた新しい木材だけを使っています。オレゴン州ではそのように30〜40年単位で森林を循環させ、まさに持続可能な森林育成をやっているのです。ドームは在来工法の建物にくらべて環境に優しい建築物といえます。
また材料が少なく、しかも基本構造がパネルキットになっていることは、建築にかかる時間がそれだけ早くしかも簡単になったわけです。
さて、ドームの特徴はなんといってもその強靱性・安定性です。四角形は弱い構造形です。長板を4枚釘で留めた長方形のどこでも力を加えれば簡単にかたちが崩れてしまいますね。在来工法の建物は基本的にこれと同じかたちです。では、板を3枚釘で三角形に留めたらどうでしょう。どこに力を加えてもびくともしないはずです。ちからが均等に分散されてしまうからです。
自然はそのことをちゃんと知っているんですね。生命はその基本構成単位を球形にしてその強さと効果を最大にしています。たとえば、雨粒は地表に落ちるためのもっとも抵抗を少ない球状ですし、光と熱をもたらす太陽も強力な風も円運動です。そう考えると、人間が球形の家に住むのは自然なことなのかもしれません。自然は四角形などつくりませんから。
こういうデータがあります。1989年カリフォルニアのサンタクルズで震度7.1の地震が起きました。在来工法の普通の家はほとんど完全に破壊されたにもかかわらず、この地域に建っていたドームハウスはすべて無傷でした。1992年またもや震度7.4の地震が南カリフォルニア、ヤッカバリーを襲いました。震源地からわずか3.6キロメートルにあったドームハウスはすべて無事でした。しかし、同じ地域の在来工法住宅はすべて壊滅したのです。
1992年、記録的に巨大なハリケーンが南フロリダ(アンドリュー)とハワイ・カウワイ島(イニキ)を襲いました。時速321キロメートルという信じられないような強風と竜巻が住宅地をすべてなぎ倒して行きました。いや、ほとんどすべてと言うべきでしょう。ほかの家屋が破壊されたのにもかかわらず、ドームハウスだけはこのハリケーンにびくともしなかったのです。
あるドームハウスは、時速339キロメートルという猛烈な風と竜巻に同時にさらされたのですが、戸と窓が吹き飛ばされただけでした。箱形の普通の住宅はすべて基礎しか残っていませんでした。
じつは、この年に私もたまたまカウワイ島に行きました。イニキが通り過ぎたその直後だったので、いかにそのパワーがすごかったのか目のあたりにしました。あのパームツリー(ヤシの木)が根こそぎ倒れていたのには思わず身震いしたことをおぼえています。
球体は自然が考えだした最も効率の良いかたちです。
それは最小の表面積という意味があります。従来の長方形の家にくらべるとその表面積がドームハウスは30%少ないのです。これは、エネルギー効率が30%高いということになります。
フラーは、「もっとも可能な短い時間で、生態系に負荷をかけず、だれにも迷惑にならないような家つくり」を目指したそうです。
ドームハウスはその夢を実現しました。
ところで、話しはかわりますが。松山と言えば道後温泉。温泉と聴くと目がないわたしはもちろん2回も入ってきました。100年以上まえに建ったという本館はまわりの近代式温泉ホテルにぐるりと囲まれて異彩をはなっていました。やはり、建物の雰囲気も大切です。日本最古の温泉とうたわれている神の湯に浸かってきました。
ありがたい。
1 件のコメント:
玄さん、
この間は、私が忘れた帽子を
送って下さって、有難うございます。
VERONZA.ORGにて、
VERONZA BOWERS JR.のことを知りました。
日本では、沖縄返還協定の核、基地密約に抗った星野文昭さんが未だ刑務所にいます。
ふぅむ。
玄さんから教わった、
HO' OPONOPONOのフレーズを唱えます。
I'm sorry.
Please, forgive me.
And, thank you.
I love you.
では、またお会いしましょう。
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