月曜日, 8月 10, 2009

卒業生へのスピーチ

ポール・ホーケンというアメリカの環境活動家、企業家、ジャーナリストを知っている方は少ないかもしれません。山川紘矢・亜希子訳「フィンドホーンの魔法」の著者といえば、あーと言う人もいるでしょう。なかなか興味ある経歴の持ち主で、若い頃はボストンの久司道夫の元でマクロバイオティック自然食品会社エレウォンの設立に関わったり、ロッキーマウンテンインスティテュートのエイモリー・ロビンズとベストセラーになった「自然資本の経済」を書いています。数日前、オレゴンのユージーンにいる友人のトム・アトリーから送られてきたポール・ホーケンの講演録を一読して、その素晴らしい内容に感銘させられました。さすが時代の流れを適格に捉える目を持ったご両人だと思います。”生命は、生命に相応しい条件を創造する”・・これに反することを人類はいかにこれまでやって来たのでしょうか。頭脳ばかりではなく、いのちが喜ぶような技術と文化と暮らしをこれからの人類の道程基盤にしなければいけません。


ポール・ホーケン

以下は、ポール・ホーケンがポートランド大学人道文学名誉博士号を授与されたことを記念して5月3日に行った2009年度卒業生への講演です。

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「この講演を頼まれたとき、「ストレートで、ありのままの、厳格で、正直な、情熱ある、身震いする、驚くような、そして素直な」スピーチをよろしくと言われました。でもプレッシャーなんかありませんよ。

まず驚きの部分から始めましょうか。2009年度のクラスのみなさん。あなたたちは、あらゆる生命システムが衰えつつあり、しかもそのスピードが加速されつつある時代の地球に、人間として生きる意味を考えなければいけません。唖然とするような状況です・・でも、過去30年間に出された学術論文でこの主張に反論できるものは一つもないのです。基本的に、人類社会は新しいオペレーションシステムが必要です。そしてあなたたちがそのプログラマーなのです。それも、あと数十年のうちに必要です。



この惑星には説明書が付いていたのですが、どうやら私たちはそれをどこかになくしたようです。水や土壌、空気を汚さないこと、地球を人口過密にしないこと、温度調節器には触らないことといった大切な決まりを守って来なかったのです。バックミンスター・フラーが、宇宙船地球号は非常に巧妙にデザインされているので、それが時速100万マイルで宇宙を飛んでいること、しかもシートベルトも要らず、余裕たっぷりの座席と本当に美味しい食事まであることなど、私たちは夢にも思っていないと言っています。でもそれもみな変りつつあります。

あなたたちが授与される卒業証書の裏には見えない言葉が書かれています。もしあなたたちがその解読用のレモンジュースを持って来ていなかったら、何が書いてあるのか言って上げましょう。それにはこう書いてあります。「”優秀”な生徒のあなたを地球が採用します」。地球には求人担当者やリムジンをあなたたちの学校に送る余裕はありません。その代わり、雨や夕陽、熟したチェリー、夜花開くジャスミン、そしてデートの相手のあの素晴らしく可愛い子をあなたたちに送って来ています。この意味が分かりますね。つまりこういうことです。必要とされる期間内にこの惑星を救出するなんて無理だ、という考えを忘れるのです。不可能に決まっているだろうという人たちの言葉に気をくじかされてはいけません。やるべきことをやるだけです。やってみて初めてそれが無理かどうか分かるでしょう。



未来について楽観的か悲観的かとよく訊かれますが、私はいつも同じ答えです。いま地球に起きている科学的事実を見て悲観的にならなかったら、データを理解していないということです。でも、みなさんがこの地球をなんとか元に戻そう,貧しい人たちの生活を改善しようと活動している人たちに会っても楽観的にならないとしたら、それはいま起きていることを把握できていないからです。私が見る所、世界中で普通の人びとが絶望的状況や権力、そして想像を超えるハンディキャップに対して立ち上がり、この世界にかつてあった品位と公正さと美を回復させようと運動しています。詩人のアドリエンヌ・リッチはこう書いています。「余りにも多くが破壊された。私はそれでも、何歳になっても執拗に、なんの特別な力も無いままに、世界を復活させる人々と運命を供にするのだ」。これ以上によく語っているものはないでしょう。人類はひとつになっているのです。世界の再構築をしているのです。そしてその活動は、教室や農場、ジャングル、村々、キャンパス、会社、難民キャンプ、砂漠、漁場、スラムで起きています。



あなたたちは人々を思いやるたくさんの仲間に入るのです。いま私たちの時代のもっとも緊急な課題に取り組んでいる団体や組織がいくつあるのか知りようもありません。気候変動、貧困、森林破壊、平和、水、飢餓、保護管理、人権などたくさんの問題があります。かつてない規模の運動がこの地球に起きつつあるのです。それはなにかをコントロールするのではなく、関係性を求める運動です。支配力の集中ではなく、それを分散させる活動なのです。マーシーコープス(Mercy Corps)のように、見えない所で活動し、坦々と仕事をやり遂げます。大きな組織ですが、この運動の本当の規模を知る人はいません。

それは世界中の何十億の人々に希望と援助と意味あることを与えています。その影響力はアイデアであり、力ではありません。それには、教師、子どもたち、農民、ビジネスマン、ラッパー、オーガニックファーマー、修道女、アーティスト、役人、漁民、エンジニア、学生、自称作家、嘆くイスラム教徒、不安を抱く母親、詩人、国境なき医師たち、悲しむキリスト教徒、ストリートミュージシャン、アメリカ合衆国大統領、そして作家のデービッド・ジェームズ・ダンカンが言うように、私たちを計り知れないほど愛している存在の創造主がいます。



ユダヤ教の教えに、「もし世界が終わる時がきて救世主(メサイア)が現れたら、まず木を植えよ。そうすればそれが本当か分かるだろう」というのがあります。インスピレーションは、私たちに降り掛かるかもしれないことをいくら追いかけても得られません。それは、再興し、誤りを正し、改正し、作り直し、回復させ、考え直し、再検討を進んでやろうという人類の意欲の中にあるのです。「あなたはある日なすべきことをやっと見出した、そして、周りの人々が良からぬ忠告を大声で叫んでも、それを始めたのだ」と、メアリー・オリバーは俗世間から離れて、生きている世界への深い繋がりに向かうことを描写しています。

夜のニュースがいつも見知らぬ人々の死を伝えているのにもかかわらず、何百万の人々が見知らぬ人々のために働いています。この見知らぬ人々の親切さの起源は、宗教的で、神話的でさえあるのですが、特に18世紀にその始まりが見出されます。奴隷廃止論者たちが、このような見知らぬ人々の権利を守ろうという運動を国内(イギリス)と世界で始めた最初の人たちです。そのときまで、自分たちのため以外に苦情を訴える人々はいませんでした。この運動の創始者たち(注:奴隷貿易廃止促進協会)はよく知られていました・・グランビル・クラーク、トーマス・クラークソン、ジョサイア・ウェッジウッド・・そして彼らの目標は表向きにはとんでもないものだったのです。当時、世界人口の4人のうち3人は奴隷だったからです。お互いを奴隷にすることが人類が何世代に渡ってやってきたことです。

そして奴隷廃止論者たちの運動は不信の念で迎えられました。保守派論者は奴隷廃止論者をリベラル、進歩派、偽善家、余計な世話好き、活動家などと馬鹿にしました。彼らは経済を破滅させイギリスを貧困に陥れると言われました。しかし、歴史上初めて、人々が自分たちとはまったく直接的にも間接的にも利害関係がない人々を助けようと集まって組織を作ったのでした。そして今日、何千万という人々がこれを毎日やっているのです。それは、非営利の世界、市民社会、学校、社会的企業活動、NGO、そして社会的、環境的公正さをその営業目標に置く企業などと呼ばれています。その活動の範囲と規模は歴史上例を見ません。



生きている世界とは”どこか”にあるのではありません。あなたたちの心にあるのです。私たちは生命について何を知っているのでしょう。生物学者のジャニン・ベニュアスの言葉で言えば、”生命は生命にふさわしい条件を創造する”と言います。未来の経済のモットーとしてこれ以上のものを考えつきません。いま人が住まない放置された何万という家屋があり、また家が無い何万と言うホームレスの人たちがいます。経営の破綻した銀行家たちが、破綻した資産をどう救い出すべきかと機能不全に陥っている監督機関に助言しているのです。この惑星上で完全雇用でないのは私たちの人類種のみです。おわつらえむきじゃないですか。私たちの経済によれば、地球をリアルタイムで破壊する方が、それを再生、回復、持続するよりも安くつくと言うのです。銀行を救済するにはお金を印刷すればいい、でも、惑星地球の救済に生命を印刷する訳にはいきません。現在、私たちは未来を盗んで、今の時代に売っているんです。そしてそれを国民総生産と呼んでいるのです。盗む代わりに、未来を癒すことに基ずいた経済にすることは難しいことではありません。未来への資産を創造するか、あるいは未来の資産を使うかのどちらかなのです。ひとつは復元と呼ばれ、もう一つは搾取と呼ばれます。そして私たちが地球を搾取するたびに、人々が搾取され、言うに言えない苦しみがもたらされるのです。地球のために働くことは豊かになるための手段ではありません。豊かにあるための方法です。



最初の生物細胞が現れたのは約40億年前です。その直接の子孫たちが私たちの血流中にすべて存在しています。実際、この瞬間にも、毎秒私たちが呼吸している(気体)分子はモーゼやマザーテレサやボノが吸ったものです。私たちはとてつもない規模でお互いに結び合っているのです。私たちの運命は別々に分離できません。すべての細胞のそれぞれの夢が二つの細胞になることだからこそ、私たちは今ここに存在しているのです。そしてその夢が実現しているのです。あなたたち一人ひとりに1、000兆個の細胞があり、その90%は人間の細胞ではありません。あなたたちのカラダはコミュニティ(共同体)なのです。それらの他の微生物たちがいなかったら、あなたたちは数時間以内で死んでしまうでしょう。人間の各細胞には4、000億個の分子があって、何兆という数の原子の間での何百万という反応プロセスを行っています。一人の人間の中で行われている細胞活動の規模は驚くべきものです。一瞬の間に1セプテリアン(10の24乗)、つまり1の後に24個のゼロがつく数なのです。1,000分の1秒の間に、私たちのカラダはこの宇宙にある星の数よりも10倍も多くの反応プロセスを経験しているのです。それは、チャールズ・ダーウィンが、生物はみな”小さな宇宙で、それは考えられないほど微小で空の星ほど無数の自己増殖器官で造られている”ことを科学が発見するだろうと言った予言とまったく同じです。


それで、あなたたちに二つの質問があります。まず最初に、自分のカラダを感じられますか?ちょっと止まって、自分のカラダを感じてみて下さい。同時に1セプタリアンの生体活動が起こっているのです。あなたたちのからだはそれを余りにも見事にやるので、あなたたちはそんなことよりも、いつこの話が終わるんだろうなどと考えるのです。でもあなたたちはそれを感じることができます。それが生命と呼ばれるものです。これこそあなたたちなのです。もう一つの質問。あなたたちのカラダはだれがコントロールしているのですか?それらの体内分子を管理しているのは誰ですか?どこかの政治政党でないといいのですが。生命は、生命にふさわしい条件をあなたたちの中に創造しています。それはあらゆる自然の中でも同じです。私たちが持って生まれた性質とは、生命にとって助けになるような条件を創り出すことなのです。私があなたたちに想像して欲しいことは、人類全体が本来心の奥に持っている叡智を明らかに示して、一体となって過去の傷と誤った行動を癒している姿です。


ラルフ・ワルドー・エマーソン(19世紀アメリカの哲学者)がかつてこう訊ねました。「もし星々が数千年にわずか一回しか現れないとしたらどうするだろう?」もちろん、その夜は誰も眠らないでしょうね。世界には新しい宗教が一夜にしてできるでしょう。私たちは興奮して熱狂し、神の栄光を称えるでしょう。でもその代わり、星々は毎晩現れて、私たちはテレビを見ます。

世界中の人間たちがお互いの存在に気づき、文明社会を脅かしている多くの危機に気づいているというこの特別な時代は、過去数千年でも、数万年でもなかったことです。私たちの一人ひとりが宇宙のすべての星々のように、複雑で美しい存在です。私たちは偉大なことを成し遂げてきました。そしてまた、創造を敬うということでは、道を逸れても来ました。これまでのどの世代にも贈られたことのないびっくりするようなすごいチャレンジにあなたたちは進んでいるのです。あなたたち以前の先輩たちは失敗しました。彼らは夜中起きていなかったのです。彼らは気を逸らせてしまい、生命があらゆる瞬間奇跡の存在だという事実を見失ってしまったのです。自然の神があなたたちにこっちにいらっしゃいと手招きしています。これより良い社長などいませんよ。世界で現実からもっとも離れている人が皮肉屋さんです。夢を見る人ではありません。どう考えてもうまく行きそうもないときに、期待することほど価値あることはありません。これはあなたたちの世紀です。それを受け入れ、一生をかける思いで参加して始めてください。

原文:http://www.charityfocus.org/blog/view.php?id=2077

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

すばらしいスピーチですね!
ありがとうございます。
言葉の素晴らしさ、偉大な先輩の励ましに
明日への力をいただきました。

匿名 さんのコメント...

OK氏のメルマガより転載

ところで、選挙だが、おそらく大どんでん返しがあるはずである。
なぜか某与党肝いりの票を数える機械がつぎからつぎへと導入されているし、米国ブッシュが再選されたときも
ケリーがうわまわっていたのにブッシュを勝たせたのは、集票機である。

なぜ、一社だけの独占発注なのか?

ムサシという会社である。
http://www.musashinet.co.jp/
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090715-00000066-scn-biz

はたして、選挙直前に修理ですよという人たちが、投票所にいっせいにあらわれて票は数え終わったらすぐに票は封印して廃棄などになっていなければいいが。

匿名 さんのコメント...

OK氏のメルマガより転載

ところで、選挙だが、おそらく大どんでん返しがあるはずである。
なぜか某与党肝いりの票を数える機械がつぎからつぎへと導入されているし、米国ブッシュが再選されたときも
ケリーがうわまわっていたのにブッシュを勝たせたのは、集票機である。

なぜ、一社だけの独占発注なのか?

ムサシという会社である。
http://www.musashinet.co.jp/
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090715-00000066-scn-biz

はたして、選挙直前に修理ですよという人たちが、投票所にいっせいにあらわれて票は数え終わったらすぐに票は封印して廃棄などになっていなければいいが。