水曜日, 7月 19, 2006

7月19日世界の危険な潮流

ブッシュ大統領という人物はどこまで本気でどこまで冗談なのか分からない人です。ロシアでG8会議が開かれていましたが、その記者会見でブッシュが「イラクにデモクラシーと宗教の自由がもたらされたが、同じようなことがロシアでも起こることを望む」と発言したら、すかざずプーチン大統領が「正直なところ、我々はイラクのようなデモクラシーだけはご免だ」とやり返し、記者団がみな大笑いしました。

ブッシュは、もしかすると本当にイラクにデモクラシーがもたらされていると信じているのかもしれません。そうでなければあのような発言を堂々と国際社会にするでしょうか。

イラク戦争前夜の2003年1月、ブッシュは反フセイン派のイラク人政治亡命者たちとサダム・フセイン後のシナリオについて会議をしていました。ところが、イラク人たちはブッシュがスンニ派やシーア派という言葉をよく知らないことに驚いたそうです。

アメリカの権力のおごり(アロガンス)と無知が近年世界の暴力的混乱の起因になっていることは多くが指摘していることです。

アメリカの論客で作家のトム・エンゲルハートは、「軍事力信仰という原理主義が近年の著しい傾向だ。ブッシュ政権はひとつの原理主義政権として登場した。それはキリスト教原理主義という意味ではない。じっさいカール・ローブ、ラムズフェルド、チェイニーなどはキリスト教原理主義者とは言えない。しかし、彼らは全員軍事力の効用をひとえに信じている。かつて歴史上ないほどの強大な軍事力とそれを支えるハイテクノロジー、それに軍産複合体と巨大な軍事予算によって衝撃と畏怖の体制を築き上げた。彼らはその巨大な軍事力で世界を望みどおりにできると確信した。それから、あの今世紀のパールハーバーと言われる「911」が起こった。突然にして彼らの前に恐れおののく民衆が現われ、彼らに追い風が吹く。すべてが可能になった。神が導いたのだ。そして、予防戦争という神聖なブッシュドクトリンを作り上げ、軍事力を2002年の国家安全保障戦略の中で最高優先とした。同時に大統領は2002年の一般教書演説で「危機が迫っているときに、私は黙って待ってはいない。アメリカは、世界でもっとも危険な政権に世界で最も危険な兵器でわれわれを脅すようなことはさせない」と書いています。

ところがその後はどうなったかと言うと・・・・

世界はますます暴力が蔓延る危機的な状況になっています。イスラエル、レバノン、パレスチナ、イランそして北朝鮮。ブッシュ政権の単独行動主義とは結局武力以外の何ものでもなく、ペンタゴン主導で世界を軍事力のみで関係づけて来たけれど、しかしいまや戦力不足に落ち入り、袋小路にはまっています。中東情勢の悪化はアメリカの指導権の低下を端的に表しています。今まで軍事力外交だけでやってきたつけがまわってきたわけです。

アメリカの圧倒的武力による軍事政策が世界に与えた影響は計り知れません。ブッシュ政権以前のアメリカの軍事介入はそれなりに極秘に、公でも国際的な認知のもと(少なくとも国連主導型という形式をとって)に行われてきました。しかし、いまや世界中が紛争を武力で解決するという、非常に危険な兆候になっているようです。

日本の軍事化も言うなれば、世界の潮流に乗っているわけです。非常に危険な潮流に。それが世界の終末に向っていることを、誰もがうすうす知っているはずなのに。その流れを食い止めるパワーを人類がいつ獲得できるでしょうか。祈ることしかないのでしょうか。

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