木曜日, 4月 26, 2007

4月26日ミツバチの受難

それは最初アメリカで昨年の秋から顕著になりました。ミツバチが忽然と姿を消す現象があちこちで発生し、いまでは全米の半数の州で問題になっているのです。西海岸の商業用飼育ミツバチの60%がすでに無くなり、東海岸では70%にもなっています。さらにヨーロッパ(ドイツ、スイス、スペイン、ポルトガル、イタリー、ギリシャ、イギリス)も大きな打撃を受けているようです。

その本当の理由は、まだ誰も分かりません。ダニ、寄生虫、温暖化、遺伝子組み換え植物なども考えられましたがどれも説得力がありません。

これは4月16日のインデペンデンス紙(英国)が報道した記事です。

それによると、ミツバチがいなくなるのは、なんと携帯電話の電波が原因だというのです。
つまり、電磁波が原因だというのです。

じつは、この時期はミツバチの分蜂が盛んになるのですが、我が家には例年ならうるさいほど飛び回っているミツバチの姿さえほとんど見かけません。最初は、気温がまだ低いせいなのかなと思っていましたが、それにしても昨年から急激に群れが減っているのは異常です。

そしてこの記事を読んで合点がいきました。この1〜2年のあいだに携帯電話の発信塔がそこら中に立ち始めたのです。この近くにも昨年ついに立ってしまいました。ミツバチ群が姿を消した時期とぴったり重なるのです。鴨川で養蜂をやっている友人の桑原くんに訊ねたら、やはり数が減っていると言っていました。

ドイツの研究では、以前から高圧電線の近くではミツバチが異常な行動を起こすことが知られていました。じっさい、巣箱の近くに携帯電話を置いておくとミツバチは決して巣に戻らないそうです。すでに90年代に電磁波の影響に関する研究をアメリカ政府と携帯電話会社の依頼で行ったジョージ・カーロという科学者は「今では電磁波が原因だと確信している」そうです。

電磁波の危険性については、以前から多くの科学者たちから警告がなされてきていますが、もちろん政府と業界は危険性は「科学的」に実証されていないと切り捨て、その結果として今全国で例の発信塔がニョキニョキと立ち並ぶという恐ろしい状況になっているわけです。日本にも「電磁波なび」という、市民グループがつくったサイトがあるのを最近みつけました。そこで、電磁波の安全性は科学的実験で実証されているという業界の実験内容を見て唖然としました。細胞に電磁波を40日間浴びせてもなんの異常が起きなかったから人体にも「安全」だと主張しているのです。この研究者と会社は本当に電磁波の安全性がそんな杜撰な実験で実証できるとこころから信じているのでしょうか。

ミツバチの突然の世界的な消滅はもっと深刻な問題に発展する可能性が大きいです。農業植物の受粉はほとんどミツバチの働きによるものだからです。それがなくなったらいったいどうなるのでしょう?

・・・・とここまで書いて、今日なにげなく朝日新聞を手に取ったら、「天声人語」でこのミツバチ大量失踪事件のことが書いてあるではありませんか。ところがその原因は不明として、インデペンデンス紙記事の電磁波の影響ではないかということは書いていませんでした。天声人語の書き手は、この記事のことを知らないはずがありません。ただ、書けなかったのでしょう。電磁波の危険性を少しでもほのめかせば、その余波は大きく、大問題になることは間違いないからです。この人は怖くて書けなかったのですね。

ところが、ふと朝日の同じ1面の上段に目をやると、そこには大きく「送電線の磁界規制へ/経産省・国際基準と連動」と書いてあるではありませんか。送電線など電力設備の周りに生じる磁界について、経産省はWHOなどの基準に合わせて規制する、というものです。これは、言葉を濁しているものの、はっきり言えば、電磁波の人体への影響が各国で問題になりつつあることで、政府も重い腰を上げざるを得なくなったということです。

ミツバチが人間に身を挺して危険を訴えているのですね。

日曜日, 4月 08, 2007

4月8日クロ塗り

今日は雨上がりの素晴らしい春日でした。午前中に杏菜を近くのグラウンドに送って行くと、入り口が満開の桜並木になっていて、通る人を花のトンネルで包み込むような感じで、すごい贅沢な気持ちにさせてくれました。

午後は、しばらく放ったりかしになっていた田んぼでクロ塗りにとりかかりました。田んぼの壁面を土で塗り込めて水止めしますが、房州ではそれをクロ塗りと言います。代掻きをやって柔らかくなった土を鍬ですくうようにして塗り込んで行きます。毎年この作業をやるのが今の時期で、木々の若芽や若葉が陽の光に輝く美しい風景を堪能しながら
のクロ塗りはまさに至福のときです。

稲作りを始めてかれこれ10数年になります。畑で野菜を育てるのも、土や花や虫たちと一緒になって、自然と戯れるという平和な境地になれますが、田んぼで稲をつくる場合は、そのひとつひとつの作業すべてが自然の奥深くと繋がる感覚になれるのです。稲作りと言うとひとびとはどのように収量を増やすかという議論になってしまいがちです。もちろんたくさん穫れることには越したことはありませんが、稲作りはもっと奥の深い、スピリチュアルと呼んでもいい神聖な境地に導いてくれるのです。そんなクロ塗りから始まる一連の田んぼつくりの妙味は、やってみないと分からないでしょう。

木曜日, 4月 05, 2007

4月5日バハカリフォルニア

メキシコ領バハカリフォルニアは未開発の自然溢れる素晴らしい地域で、そこにあるサン・イグナシオ・ラグーン(潟湖)は絶滅が危惧されるコククジラ(Gray Whale)の繁殖場として知られています。ここはコククジラが子どもを産む地球で最後の残された聖域なのです。

Grey Whale JPG

一昨日、アメリカの大きな環境団体である天然資源保護委員会(Natural Resources Defense Council/NRDC)からうれしいニュースが届いていました。メキシコ政府がこのラグーンを含む109,000エーカー(1億3千万坪)という広大な土地を保護地域として提供することを決定したというのです。この団体は絶滅が危惧される動物を保護する運動で世界的に知られていますが、長年のコククジラ保護運動がやっと実ったわけです。これでクジラたちもひとまず一安心。

バハカリフォルニアは以前あることで関わり私にもとても馴染みのあるところなのです。

Baja Map JPG

1990年ころ、私はゴルフ場問題グローバルネットワークという文字通りの国際環境団体の世話人をやっていて、日本はもとより海外のゴルフ場開発問題に関わっていました。おかげで、東南アジアやハワイ、アメリカ、ヨーロッパを旅し自然豊かな地域を訪れ、観光開発問題に取り組む活動家や知識人、そして自然と共存している地域の人たちと交遊できたことは一生の財産になっています。

ある日、ロスアンゼルスのプロ・エステロスという環境団体から1通の手紙をもらいました。「メキシコのバハカリフォルニアに日本の鹿児島にある岩崎産業というディベロッパーが、広大な土地を買収しメガゴルフリゾートを開発しようとしている。当地は生態系の聖域で、その広大なエスチュアリ(河口潟)は渡り鳥の貴重な生息地で、とくにラグーンはコククジラの繁殖場でもある。もし、ここが開発されたらそれは全生態系にとって壊滅的な結果をもたらすであろう。私たちはメキシコ政府をはじめ国際的にこの開発計画を止めるために運動しているが、どうか日本人にもこのことを知ってもらい協力してほしい」という内容でした。たまたまロスアンゼルに行く用事があったので、この環境団体の人たちと会って詳しい情報を手に入れることができました。もちろんバハカリフォルニアのことを知ったのはそれが初めてでした。たまたま兄がメキシコ在住だったので、現地やメキシコ政府側の状況なども調べてもらうことができました。

当時の日本はバブル経済で、まさにネコも杓子も土地投機に狂騒していた時代でしたね。私はさっそくゴルフ場開発問題に関わっている鹿児島の仲間にこの岩崎産業という会社を調べてもらい、同時に新聞社やニュースレターにこの情報を流しました。驚いたことに、この会社は奄美大島でゴルフ場開発をしようとしてすでに現地で大騒ぎになっていることがわかりました。いわゆる悪質な乱開発業者だったのです。なんとか朝日新聞の記者が記事にしてくれました。しかし、当時は日本列島総リゾート開発ブームで、なんとゴルフ場開発計画だけでも1000カ所もあったのです。じつは私が住む鴨川市でも5カ所のゴルフ場とマリーナ建設計画が持ち上がっていて(私が環境問題に関わるようになったきっかけがこれでした)、全国そのような似たり寄ったりの状況でしたので、バハカリフォルニアのことは実際にはそれほど人びとの関心を呼ぶことはなかったようでした。あの時代は、今から思うと、環境を守るよりも、バブル経済でいかにお金を儲けるかということの方にひとびとの心が捉えられていたようです。やがてバブル経済が弾け、幸いなことにこの岩崎産業がどうやら経営的に危機に陥ったようで、奄美大島とバハカリフォルニアの開発計画から手を引きました。

実は今回のニュースで知ったことですが、その後あの三菱がここに大製塩工場を建設しようとしていたのです。つまり日本企業が10数年間もの間、この世界で唯一残されたコククジラの生息地を脅かし続けていたのです。日本人がまだまだエコノミックアニマルと思われているのは仕方ないでしょうね。