月曜日, 5月 29, 2006

6月1日 BeGood Cafe

Gen JPG

5月21日、東京でBeGood Cafeに出演しました。プロデューサーのシキタ純さんから、BeGood Cafeを今年からもっと社会性の高い方向に持って行きたいので、ついては海外情報のようなものを定期的にやって欲しいと依頼されたからです。結局、ワールドレポートというタイトルで10分のセクションをいただいて日本のメディアでは流れないような海外最新情報を語ることになりました。とは言っても、世界のニュースを10分間で話せるわけはなく、今回はアメリカの政局を中心にして、ブッシュ政権の支持率低下と反ブッシュの動き、NSA(国家安全保障局)の電話盗聴事件、同性愛結婚問題などを手短に説明しました。コンピュータ・マスターのダミアンが映像とサウンド製作をやってくれたので見応えのあるリポートになったと思います。ブッシュ大統領を弾劾しようという動きは以前からありますが、歌手のニール・ヤングの「大統領を弾劾しよう」という最近発表された曲が、ニューヨークタイムズの論説でも取り上げられるほど話題になっているので、まずこれを聴いてもらいました。
歌詞はこんな感じです。

Let’s Impeach The President!
http://www.neilyoung.com/
「大統領を弾劾しよう!」
大統領を弾劾しよう
嘘を口実に戦争を始め、権力を濫用し、我々の金を垂れ流した
犯罪人を雇い、ホワイトハウスは闇に隠れている
兵士を戦争に送り出す理由のために、事実を曲げた
市民をスパイし、あらゆる法を犯し、コンピュータと電話を盗聴させた
宗教を選挙に利用して、国を人種別に分け隔て
黒人は無視されたままだ
大統領を弾劾しよう

ニール・ヤングが昔いっしょに組んでいたグループ、Crosby, Stills, Nash & Youngがこの夏再結成して全米ツアーを行うそうです。ニールはどちらかというと保守的な共和党支持者だったのですが、イラク戦争開始以来だんだん考えが変わって、ある日旅先で何気なく手に取った新聞に負傷したアメリカ兵士たちが改造されたボーイングジェット機内の病室で治療されている写真を見て「切れて」しまいました。もうこれ以上ブッシュに大統領を続けさせてはいけない、と作曲したのがこの歌です。

最後はビートルズの曲の替え歌「決定者」で締めくくりました。元曲はMagical Mystery Tourアルバムの「I am the Walrus」です。ルイス・キャロルの「不思議な国のアリス」をヒントにジョン・レノンが作詞作曲されたとされるこの曲をじつにうまく替えていると思います。

The Decider By Paul Hipp
http://decider.cf.huffingtonpost.com/
「決定者」

俺は俺、ラム公(ラムズフェルド)はラム公、イラクは自由だ、みんな一緒だ
チェニーが鉄砲撃てば世界は大騒ぎ,俺が嘘をつけばさ
嘘なんだよ
自分の脳みそに陣取って、最後の日を待っているのさ
企業はオイルマネーで大儲け
俺は法の上さ、何が正しいか悪いかは俺が決める
卵頭の俺が最高指揮官、決定者、ククーカチューだ
バグダッドの警官が幼い犠牲者を並べてる
弾丸が飛んで殺されたんだ、お母さんの叫びが聞こえるかい
俺は嘘つきさ
金持ちたちに減税、貧乏人にはなにもなし
ホワイトハウスの庭に座って神に祈るのさ
いろいろ考えているのさ
脳みそだけがないだけさ

痛烈なブッシュ批判ソングですね。今度のBeGood Cafeは6月18日です。

土曜日, 5月 27, 2006

5月27日 オーママの誕生日

Abraham Lincoln JPG

「この残酷な戦争(南北戦争)もやっと終結に近づいたことは喜ばしいことだ。莫大な資産と血が犠牲になった。共和国にとってはまさに試練のときであった。しかし、この国の近い将来を思うと、迫り来る危機に震えてしまう。戦争の結果、企業が支配者の地位を確立した。これからは上部の者たちの腐敗の時代が始まるだろう。国の金権力(マネーパワー)は、人びとの偏見につけこんで、あらゆる富を少数者の手中に集中させ共和国が滅亡するまで、その支配を守ろうとするだろう。いまだ戦いの最中だが、この国の平和を想うと、今かつてないほど不安にかられる。神が、私の不安は根も葉もないものだと思し召すように」(訳玄)
1864年11月21日 アブラハム・リンカーン大統領 

リンカーンにはすべて見えていたのですね。それから142年経って、要するに、なにも変わっていないということです。戦争とマネーパワーは、かたちこそ変化し、規模が増大しただけで、中身は当時とそっくり。リンカーンが今生きていたら何と言うでしょう。

私の母を子どもたちはオーママと呼びます。オーママは1914年(大正3年)5月24日に生まれました。今日は、誕生日祝いということでみんなで梅の花という豆腐料理屋で会食しました。92歳まで元気に生きてくれてありがたいことです。ところでオーママが生まれた1914年は第一次世界大戦が始まった年で、日本では大正デモクラシーが盛んだった頃です。日本経済は戦争景気で多いに伸び、企業は大きくなったが、大インフレで貧富の差は拡大し、各地で労働争議が頻発し、労働組合運動などが始まります。しかし、結局デモクラシーと言っても名ばかりで、天皇制を絶対とする国体論の前に、なし崩し的に右翼イデオローグに押さえつけられ、そのまま二・二六事件を経て、軍部独走・独裁、太平洋戦争へと突き進むわけです。

オーママの話。
「みんな戦争は嫌だったよ。たくさん死んだし。息子が戦死したのを誇らしいと言うお母さんがいたけれど、そんなことはないと思うよ。自分の子どもが死ねば悲しいのは母親なら誰でもそうなんだから」
(日本人は優秀民族だから、朝鮮や中国に攻め込んで彼らを救ってやるんだという気持ちもあったのでは?)
「そうねえ。小さい時からそう教育されていたから」
「あれは苑子(姉)をおぶって汽車で水戸に向う途中だったわ。空襲をうけて汽車のボイラーに大きな穴が空いて止まってしまったの。当時は休暇で家に帰る軍人が必ず車両に1、2人は乗っていたのよ。列車は高いでしょう。その軍人さんがひとりひとり抱きかかえて降ろしてくれて、さあ、あの林に逃げ込みなさいと言ってたわ」
「東京にもどったらすっかり風景が変わってたの。四谷の家は無くなってた」

オーママのような生の戦争体験を語れる日本人がどんどんいなくなってしまっています。治安維持法や特高の怖さは身をもって経験した人でないと分からないかもしれません。今度はゆっくりオーママの話しを聞きに行ってきます。

木曜日, 5月 25, 2006

5月25日

今年は稲苗の成育がいまひとつ芳しくありません。4月〜5月と雨降り続きで日照時間不足と低温が祟って、発芽率も悪く、例年に比べ丈が伸びていないのです。この2、3日やっと5月晴れがつづいているので、なんとか持ち直してもらいたいものです。先週アメリカに1週間ほどでかけていたのですが、行く前に蒔いておいたニンジンやホウレンソウがほとんど発芽していないのでがっかり。またやり直しです。でも畑ではタマネギがたくさんりっぱに育ってくれて昨日うれしい収穫をしました。ソラマメも大量にできて、タマネギといっしょにスープにしたらまさに絶品。サツマイモとショウガを植えて、あとは黄色くなってきた小麦の収穫を待っているところです。

さて、アメリカでひさしぶりに現地のテレビや新聞・雑誌に接しました。地元紙(ホノルル・アドバタイザー)のトップは、地元出身の海兵隊員3人の写真が載っていて、イラクで死んだことを報じるニュースでした。日本ではこどもが殺されるニュースがトップですが、アメリカは戦死者なのです。すでに2004年のイラク侵攻以来2、500人以上の兵士が殺されているのですが、最近は殺される数が増えて毎日平均3人になっています。イラクには13万のアメリカ軍が駐留していますが、その75%がアメリカはイラクから1年以内に撤退すべきだと考えているという調査結果が最近ありました。

Approval Rating  JPG

(ブッシュの支持率グラフ/赤線は支持、黒線は不支持)
また25%は即撤退すべきだと言っているそうです。そしてこれまでに55万人のベテラン(帰還兵)がいるというので驚きました。そしてその半数以上が肉体的・精神的な障害を抱えているのにもかかわらず、軍人医療費予算カットで満足に治療を受けられない帰還兵がほとんどだそうです。このような厭戦気分を反映して、ブッシュ大統領の支持率は30%をすでに割っている状態です。

Michael Hayden  JPG

テレビでは、そのブッシュ大統領に新しくCIA長官に任命された軍人のマイケル・ヘイドンに対する上院委員会の公聴会を写していました。このヘイドンは、911事件以降、NSA(国家安全保障局)の長官を務めていた人で、いまアメリカ中で問題になっているワイアータッピング(密かに何百万の市民の電話通話記録を調べていた)をやった張本人です。この人を今度はCIA長官に任命しようというのですからブッシュ政権も強引です。民主党議員の憲法違反ではないかという質問に、彼は自身たっぷりに「すべて大統領の命令でやったことで、まったく合法です」と答えていたのには驚きました。先週さらに明らかになったことは、政府に批判的なABCやニューヨークタイムズ、ワシントンポストなどのジャーナリストも盗聴の標的にされていたことです。しかし、これらはすべて対テロ戦争のためという口実で合法化(愛国者法)されているのです。さらにショックだったことは、新聞の論説によるとメディアがこの問題で怒り狂っている一方で、アメリカ国民はというと、むしろ対テロのためには市民の権利がそのくらい制限されても仕方ないと思っていることでした。これを読んで、いま日本で問題になっている共謀罪も、いっぱんの人たちは同じように必要悪と考えているのではないかと思わざるを得ませんでした。

Mary Cheney  JPG

もうひとつアメリカで話題になっていることがあります。チェイニー副大統領の娘であるメアリー・チェイニーが最近出版した本で自分がレスビアンであると公言したのです。これが同性愛結婚を合法化するかどうかという政治論争に油を注ぎました。チェイニーや共和党保守派はもちろん同性結婚を禁じる条項を憲法に明記すべきと言う主張ですが、秋に中間選挙を控えているブッシュ政権はこれを選挙アジェンダにしたくないのが本音なので、いまのところ黙っています。アメリカではすでに同性愛者(ゲイ)という存在は社会でひろく認められているのが現実です。もちろん保守的な南部では事情が異なりますが(ハワイの友人チャッキーはゲイですが、彼の故郷ルイジアナでゲイだと公言することはトンデモナイことだそうです)、同性愛の社員には通常の家族手当やベネフィットを支給する企業が増えてきていると聞きました。ところで、チェイニー副大統領は、娘の告白に、「お前は私の娘だ。愛しているよ。お前が幸せならいいんだよ」と言ったそうです。

ますます混迷を深めるアメリカといった感想でした。

日曜日, 5月 14, 2006

5月14日

母の日の今朝、山々の新緑がひさしぶりに明るく輝いてきました。今日はお日様が出てくれるかな。真生といっしょに雨後に一斉に出てきた巨大な竹の子、というかもう2メートルくらいに伸びている竹を切り取る、間引き作業をしました。急な斜面でなかなか大変です。

教育基本法改正法案の審議が大詰めを迎えています。昨日にニュースでは民主党が「愛国心」についての対案を出したと報じていますが、ほとんどの主要メディアでは、あたかも教育基本法を変えることがすでに前提になっている論調です。でもちょっと待てよと言いたいです。改正を声だかに唱える政治家連中は現今の義務教育の現状をほんとうに知っているのでしょうか。小泉内閣になって以来小中学生の就学援助を受ける割合が40%も増えているそうです。愛国心どころの話しではありません。憲法で保障された、子どもたちが平等に教育を受ける基本的な権利が損なわれているのです。それこそ今問われなければいけないのは、国(政府)の責任問題ではないでしょうか。自分たちの怠慢を棚に上げて教育危機などと唱えるのはまさに噴飯ものです。こんな記事もあります。就学援助が70%という小学校で、子どもたちに「将来の夢」という作文を書かせたところ、三分の一が何も書けなかったというのです。(清水澄子/女のしんぶんより)義務教育に対する国の責任を放棄したままにしているこの政府は、どんな将来像を子どもたちに残そうとしているのでしょうか。

歴史は常に勝利者によって創られる。言い方をかえると、歴史は陰謀の歴史と言ってもいいかもしれません。時の政権・体制にとって都合悪い事実は隠蔽・歪曲されていると考えていいでしょう。

どうして日本はあのような無謀な戦争(太平洋戦争)を起こし、350万人の国民、アジアで2,000万人もの犠牲者を出して負けたのでしょうか。私たちは(少なくても私は)、戦前の国民はみんな騙されて、心にもないことを言わされていたのだと教え込まされてきました。しかし、立花隆は自著「天皇と東大」でこう語っています。「あの時代の資料を読みなれるにつれて、私にだんだんわかってきたことは、あの時代は,後世の我々が考えている以上に右翼的、国粋主義的であったということである。少数の右翼国粋主義者がそうだったというのではない。世の中一般の人びとのものの考え方、感じ方が、今の我々には想像を絶するほど、右翼的であったということだ。(中略)そういうことがわかってきたとき、私はあの戦争がなぜ起きたのかが実感的に本当にわかったと思った。」

「人びとのものの考え方、感じ方が、今の我々には想像を絶するほど、右翼的であった」とは、まさに私にも想像を絶することなのかもしれませんが、この本を読み進んで(やっとほぼ終わりに近づいています)、なんとなく当時の人たちのこころが推測できます。でも、もしかしたら、戦後もそれほど根本的には変わっていないのかもしれません。日本人の感性や考え方がそれほど変化しているとは、最近とくに思えなくなってきました。天皇崇拝や国粋主義という言葉に、私は反射的に拒否反応を示します。民主主義とは相容れないと教育されてきたからです。でも実際には天皇は国民の尊敬される象徴として、私たちの日常に毎日のように存在をアピールされているわけです。それから崇拝に至るみちは意外と近いのかもしれません。そのような危機感を抱かされるこのところの日本の状況です。

火曜日, 5月 09, 2006

5月9日

3月に来日したアーネスト・スターングラス博士とローレン・モレさんの講演内容をウェッブにアップするため、翻訳などの準備をしているところです。グラフなどはコンピュータマスターのダミアンが手伝ってくれているので早々に完成することでしょう。さて、問題はもちろんその内容です。放射能の怖さはうすうす知っていましたが、ここまではっきりとデータを見せられるとまさに眼から鱗状態。正直言ってそれ以来ショックから立ち直れない毎日です。この問題をどう受け止めて行けばいいのか。何が私たちにできるのだろうか。これから生きて行くこどもたちにどんな未来を残せるのか。その問いを正面から突きつけられています。

参考に、ふたつの表をここに載せましょう。
表(1)

Hypothroidism JPG

これはアメリカの原子力発電所の稼働率と先天性甲状腺機能低下症との表です。左の縦軸は各年に新生児10万人のうち甲状腺障害を持って生まれてきた赤ちゃんの数(白丸)、右側の縦軸は原子力発電所の設備稼働率、つまり発電量(黒丸)です。1981年から2000年までのデータです。

表(2)

Strontium 90 JPG

原子力発電所から環境に放出されるいわゆる死の灰には核分裂生成物質がありますが、放射性元素ストロンチウム90はその代表的なもので、その原子組成がカルシウムと似ているために人間の骨に蓄積します。スターングラス博士たちのグループは長年にわたって幼児の乳歯を集めてそれに含まれるストロンチウム90の調査をしてきました。左縦軸が原子力発電所の稼働率(発電量=太線)、右縦軸が乳歯2,600本中のストロンチウム90の値(細線)です。

これを見て単なる偶然だと済ませるひとはよほど能天気(脳天気?)ではないでしょうか。

現代社会の混乱状態の原因に放射能の影響を指摘する人はまずいません。政府や原子力産業による徹底したPR作戦が功を奏して、原子力はクリーンだというイメージが人びとの頭にインプットされているからです。そして、それに反する声はことごとく押さえつけられていることもあります。糖尿病が放射能の影響であることは、放射線の専門家たちの間ではもう数十年前からの常識だったことを最近知りました。長年健康と病気について自然療法を研究してきた私にとっても非常にショックな話しです。私たちの親しい友人にも糖尿病に冒されインシュリン投与をしている人がいます。ジャパンタイムズの報道では国民のほぼ1割(約1,600万人)が患者である可能性があると言っています。こうなるともう国民病ですね。世界最長寿国で、世界に冠たる伝統健康食を有するこの国が、非健康食の代表と言われるアメリカの2倍の糖尿病を抱えていることなど、どうしてマスコミはいままで報道しないのでしょうか。医者は偏った食事とストレスが原因などど当たり障りの無い理由を繰り返しています。

スターングラス博士とモレさんの報告は、単にガンや糖尿病といった疾病にとどまらず、精神病や知能障害への影響も含んでいるのです。放射能の影響は年齢が若いほど顕著になりますから、もちろん胎児中にエックス線など浴びたら大変なことになるわけです。盛んに細胞分裂してからだが大きくなる成長期に放射能を浴びれば、当然それが異常増殖細胞などをつくりさまざまな病気の原因になるのです。最近問題になっている引きこもりや自閉症などの子どもたちの現象も、もちろん家庭や社会という社会環境の影響もあるでしょうが、放射能というファクター抜きには説明がつきません。

六ヶ所処理施設では3月以来、原子力発電所の1年分に相当する放射能を環境にばらまいていると言われています。単純に考えても、これは日本に原子力発電所が365カ所新しくできたことと同じになります。これだけでも十分ショッキングでありませんか。

スターングラス博士たちは、今必要なことは直ちに原子力発電所を止めさせること、そしてより安全で環境に優しい天然ガス発電にかえることだと主張しています。アメリカではすでにコネチカット州などで原子力から天然ガスに転換して稼働しているそうです。また、原子力発電所の設備をそのまま利用できるので、変換コストも大したことはないそうです。シベリアや樺太には天然ガスが大量に埋蔵されていると聞いていますから、エネルギー資源のない日本にはもってこいではないでしょうか。もちろん太陽光や風力などの自然エネルギー開発もどんどん進めていきましょう。

火曜日, 5月 02, 2006

5月2日

世の中が激しい勢いで変化しています。これに気づかない人はよほど呑気かあるいは達観しているのでしょう。そのなかで最近眼にとまった問題は、政府が押し進めようとしている教育基本法の改正(改悪?)です。いまなぜ改正する必要があるのでしょうか。ここに中央教育審議会という政府の諮問委員会による答申があります。これが改正案の基本的な理由になっているのです。

『今日,我が国社会は,大きな危機に直面していると言わざるを得ない。国民の間では,これまでの価値観が揺らぎ,自信喪失感や閉塞(そく)感が広がっている。倫理観や社会的使命感の喪失が,正義,公正,安全への信頼を失わせている。少子高齢化による人口構成の変化が,社会の活力低下を招来している。長引く経済の停滞の中で,多くの労働者が離職を余儀なくされ,新規学卒者の就職は極めて困難となっている。
このような状況を脱し,我が国社会が長期的に発展する礎(いしずえ)を築くために,戦後の我が国社会を支えてきた政治,行政,司法や経済構造などの基本的な制度の抜本的な改革が進められている。教育は,我が国社会の存立基盤である。現在あるいは将来の我が国社会が直面する様々な困難を克服し,国民一人一人の自己実現,幸福の追求と我が国の理想,繁栄を実現する原動力たり得るものは,教育をおいて他(ほか)にない。我が国社会が,創造性と活力に満ち,世界に開かれたものとなるためには,教育についても,これら一連の改革と軌を一にして,大胆な見直しと改革を推進していかなければならない。 』

これを読んで、いったいどうして教育基本法をわざわざ変える必要があるのかと疑問に思わざるを得ません。この答申では、『国民の価値観が揺らぎ、自信喪失感や閉塞感が広がっている。』として、それの解決には、政治経済などの改革とともに教育も改革しなければならないと主張しています。どうして教育も変えなければいけないのでしょうか。大体、「倫理観や社会的使命感の喪失』は現行の教育がよくないからだと言いたいのでしょう。そうかもしれません。でもそうだとしても、それは今の教育が本当に教育基本法に則ったものになっていないからであって、それを教育の場で実現させる義務を負っている政府・官僚の責任ではないでしょうか。つまり、自分たちの怠慢によって現在のような困難を導いておきながら、それを教育基本法という法律に責任転嫁しているにすぎないのです。

現行の教育基本法の抜粋を読んでみましょう。括弧内の文章は私の個人的意見・感想です。

○教育基本法
昭和二十二年三月三十一日
教育基本法
   われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
   われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
   ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。
(素晴らしい前文ですね。これだけ人間性の高い法律は世界にも類がないでしょう。9条とともに日本の誇りです)
 
第一条(教育の目的)   教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
 
第二条(教育の方針)   教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
(この学問の自由がいま権力によって犯されようとしています)
 
第三条(教育の機会均等)   すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。
 
第四条(義務教育)   国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。

第五条(男女共学)   男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない。
 
第六条(学校教育)   法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

   法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。
(本当です)
 
第七条(社会教育)   家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない。

   国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。
(いま地域で起きていることは、学校閉鎖や統合、幼稚園や保育園の予算削減(人員削減)など、まったく 国及び地方公共団体は、その義務をはたしていません)
 
第八条(政治教育)   良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。

   法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
 
第九条(宗教教育)   宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。
   国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
(戦前は東大の学生がそろって靖国神社参拝などしました。)
 
第十条(教育行政)   教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。
( 国及び地方公共団体の不当な支配がいま問題です。教育基本法改正はさらにこの支配を強化することになるのです。それは教育の根本理念である、教育の独立性、自由を奪うことになります)
   教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

以上

ここに書いてあることが本当に実施されたらそれこそ日本は素晴らしい、理想の国になるでしょう。いま、やるべきことは教育基本法を改悪して教育を官僚支配のもとにさらすことではなく、この現行の教育基本法をわたしたち親が大人が本当に責任をもって実践していくことではないでしょうか。