月曜日, 9月 29, 2014

マシュー君のメッセージ(93)

2014年9月23日




スコットランドの選挙、2017年、悲観的なメディア報道、メッセージの情報源、地球の可能性の場の動きとリニアル時間、ロビン・ウィリアムズ、自殺、イスラム教とキリスト教、イスラム国、表示



マシューです。この宇宙領域にいるすべての魂たちから、こころからのご挨拶をします。読者の方々からの最近の質問の要点が入っている、そのひとつを引用することで答えることにします。“スコットランドの独立が否決されたのは世界の進歩にとって後退だったのでしょうか?”僕たちはそのようには見ません。選挙があったこと、そしてスコットランド市民たちが平和的に独立への主張ができ、実行したことは進歩だと見ています。将来を見据えたスコットランド人たちにはがっかりする結果でしたが、彼らの独立への強い声は、スコットランドだけでなく、ウエールズやアイルランドの人々との関係を改善させなければならないことをイギリス政府にはっきりと示しました。

当分の間は、課題になっている変化がどれほど早く起きるか、またそれらの国の市民たちがどの程度までそれに満足するかはまだ分かりません。長期的には、政府によって押し付けられた法律、規制、罰則そして税金はどこでも撤廃されるでしょう。地球の人々はすべて、多次元的な存在としての生まれながらの叡智とパワーである、すべてがひとつというワンネスの中での彼らの神性さを知るでしょう。そして創造の内にあるあらゆるものの尊厳さを敬うようになるでしょう。

一部の地球外の存在たちが様々な出来事について時間枠を与えているのに、僕たちはどうしてそうしないのですか、とよく訊ねられます。まず、とくにネサラ法(国民経済安全保障改革法)の発表とか突然の富といったチャネリング情報には気をつけて見極めるようにしてください。チャネリングされたという一部の情報が、実際は人を騙し、失望させ、あるいは怖がらせるために意図的に人間たちによって書かれ配信されていることを知ってください。

ところで、僕たちが時間枠を言うことに躊躇する理由は、コンティニュウム(時空連続体)の中に存在するものを、あなたたちのリニアル(線形)時間構造に当てはめることの困難さがあるからです。このことについては後で話しますが、まず、もうひとつの理由について話したいと思います。それがはるかに重要だからです。なにかの出来事へのあなたたちの期待は、ある時間に結びついているポジティブなエネルギーを送ります。そこでなにも目立ったことが起きないと、そのエネルギーは幻滅、失望、さらに怒りにまで変化し、その波動エネルギーの落ち込みが、起こることになっている出来事をさらに遅くしてしまうのです。   

それはそうなのですが、僕たちが喜んであなたたちに言えるのは、あなたたちの社会の進歩の10年の遅れが、あなたたちの2017年には終わることです。実際、これは地球を第四密度にゆっくりと移行させた2012年12月の冬至のときと同じような天体の窓(入口)が出現する最高に都合のいい時間枠です。あなたたちの時間という概念は、実際は運動しているエネルギーです。地球のアセンションの経路がより高い、あるいはより軽いエネルギー領域に首尾よく入っているので、その残りの暫定的な数年はさらにスピードを増して過ぎて行くでしょう。そして、それに伴って増大する波動エネルギーによって、魂レベルの知識と具現化パワーがつぎつぎと実際のものとなっていくので、あなたたちはそれをこころから歓迎するでしょう。

僕たちが時間のことについていつもは躊躇するのに今回そうしないのは、ほんの小さなことに過ぎません。なぜなら2017年の惑星配列は決まっているからです。それだけではありませんよ、愛するファミリー。エボラ出血熱、ウクライナ、アフガニスタン、イラクの不安定な新政府、長い間のイスラエルとパレスチナの紛争、そして特に最近ではシリアのイスラム国勢力の拡張を阻止する対策などに関する主要メディアのネガティビティ(破壊的エネルギー)を、地球の未来へのあなたたちの楽観的気持ちと情熱が相殺するからなのです。
      
悲惨な状況を繰り返し伝えている映像や報道が恐れと悲観主義を引き起こし、それらが人々を第三密度の精神性に閉じ込めていると言うことで、僕たちはそのような状況の深刻さを過小評価しているわけではありません。例えば、予想されているイスラム国排除のための3年あるいはそれ以上の対策・・そんなに長くは必要ありません・・そしてなすすべがないとされているエボラ出血熱です・・そんなことはありません。

メディアがある程度の信用を失っているのにもかかわらず、大半の地球の人々は、あなたたちがしていることを知らないために、“専門家”の意見を信じています。彼らは、もしポジティブなエネルギーの流れが彼らの心配している状況を押し出していれば、それはもっと早く自然に改善していくことを知りません。彼らは、今日の混乱が第三密度のカルマを完了し、バランスを達成して進化する機会を何百万の人々に与えていることを知りません。彼らは、いま起きているすべてのことに参加できるように、自分たちが選んで地球にいることや、その結果は盛りを極めた地球の黄金時代であることなど知りません。

誰であれ、その人の考え方を変えようとすることはすすめません・・意識レベルとスピリチュアルな気づきの成長の速度は、神から与えられた一人ひとりの魂の特権です。それは、あなたたちのポジティブな思いと感情にある光が広く世界に輝き出すことで、あらゆる争い、苦難、苦しみを早く終わらせるようになるのです。光は・・愛です・・平和と健康と繁栄への鍵です。

以前のメッセージにある“参考図書館”を、僕たちは知るべきことはすべて知っていると解釈したある読者が、ウクライナで撃墜されたマレーシア機について僕たちが話したことを、どうしてニルヴァーナの仲間たちからの情報だとしたのですかと訊ねてきました。僕たちがそうしたのは、彼らが情報源だったからです・・僕たちの情報源はいつでも拡大しています。それらはニルヴァーナにいて地球の出来事をモニターしている魂たちから来ることもあるし、ほかの霊界にいる高位に進化した魂たち、神、進化した文明社会のメンバーたち、宇宙評議会、マスターたちから来ることもあります。 

また地球の可能性のエネルギー場を観察することでも情報を得ます。それはすべての地球の住人たち・・人々、動物たち、植物そしてデービック王国・・の集合意識を反映しています。そして僕たちのメッセージの時点での、その場のもっとも重要な動きを報告しています。けれども、あらゆる住人の考えや感情、行動はエネルギーの干満に影響しますから、つぎのメッセージまでに状況がすっかり変わることもあります。

ある状況を支配しているエネルギーの流れが強まって、その起こりうる結果が起こりそうな結果に変わってしまったのかもしれません。起こりそうな状況になっていたのが、そのエネルギーの流れが弱まったために、起こりうる状況に戻ってしまったのかもしれません。エネルギーが急激に高まって、ほとんど動きが見られないところに入って来たのかもしれません。極めて起こりそうに見えた結果の背後で強まりつつあった勢いが、強力な爆発的エネルギーが横から入って来たために、立ち消えてしまったのかもしれません。絶対確実なこと・・起こるべきして起こること・・は極めて稀です。第三密度から出て、第五密度の目的地までつづく地球のアセンションは、予測のつかないエネルギー変化の中にあって、極めて少ない例外なのです。

現在、エネルギーの場は活気にみなぎっています。新しいエネルギーの流れが現れて来ていて、一部は方向を変え、一部は勢いを得、一部は衰退してかすかな痕跡しかありません。その継続する動きはすべてあなたたちの集合的な考え、感情、そして自由意志の選択によって誘導されているのです。進行中のあらゆることの究極的結果は、それがあらかじめ決められているコンティニュウム(時空連続体)ではわかっているのですが、ある出来事が起こる時間をリニアル(線形)時間で正確に示すことが不可能なのは、それが理由だからです。

折に触れて、人の死が世界のこころを動かすことがありますが、ロビン・ウィリアムズの場合もそうです。ニルヴァーナの僕たちの仲間たちが、その地球転生の間に喜びをたくさんの人々にもたらしたこの魂を迎えるのに何千もの群衆が集まったと伝えてくれました。彼が自分でいのちを終えたことで“天罰を受ける”ことがないようにと祈りましたと書いてきた読者たちに、取り急いで言いますが、それは決してありません。

まずニルヴァーナに入ることについて話しましょう。魂は、その人が肉体生を離れたときと同じ状態で到着するエーテル体と精神から自由になります。ロビンの精神は広範囲の深刻な鬱病に悩まされていて、最後はそれに負けてしまいました。自らいのちを絶つことだけが、その耐えられない苦悩から脱出できると思ったのです。彼の深く傷ついた精神を癒す必要がありました。それには、あなたたちの病院のICU(集中治療室)と似たようなニルヴァーナの特別施設での特別な介護と絶えまない治療が与えられました。

ロビンの精神の癒しは、進化した文明社会でのいくつかの転生からの細胞記憶パターンのおかげで極めて早く、彼はすべての主要な合意事項を完了していて、鬱は合意選択ではなかったこと、彼はいまごく最近の転生とそれ以前の転生からの友人や家族たちと一緒にいて、地球の霊界の別の素晴らしい面を満喫していると、僕たちの仲間たちが報告しています。僕たち自身が知ったことを加えますが、精神とエネルギーと資質において寛大であることを選び、しかもそれに極めてはるかに秀でていたこの高い進化の魂に、宇宙全体の光の存在たちが尊敬の念を表わしています。

あらゆる魂たちに関連する自殺について、僕の母にだいぶ前にあげた情報をあなたたちに送るように頼みました。(以下は『マシューブック1:天国の真実』の“自殺”章からです。)

  スージー:マシュー、自殺した人たちはほかの人たちとは違う扱いを受けるの?    

どちらとも言えないよ。その人たちはほかのニルヴァーナに到着する人たちすべてと同じように個人的に愛情豊かな歓迎を受ける。そして個別の治療が必要なほかのトラウマを抱えた魂たちと同様に、可能な限りの癒しと調整がほどこされる。けれども、彼らのトラウマには特別な集中ケアが必要なので、彼らはまず特別治療ステーションに入る。

お母さんは、自らいのちを絶った人たちが霊界で罰を受けると聞いているけれど、本心ではそうなのかなと疑っているよね。そうなんだ、そんなことはない。自殺者たちをすべて十把ひとからげにして全員が同じ審判に直面するというのは公平でもなく、理にもかなっていない。

自殺の原因はからだの生体化学反応のバランスが深刻に崩れたために、正常な判断ができなくなる場合もあるし、いわゆる狂気による自殺の場合もある。極めて深刻な鬱(うつ)状態からそうする人たちがあるが、それはたぶん自分にとってかけがえのない人を失ったために、鬱状態が理性的な判断を乗っ取ってしまうためだろう。まさか死ぬことはないだろうと思って、愚かなことをしていのちを落とす人もいる。気持ちを立て直す時間を待たずに、そのときの絶望感からそうしてしまう人もいる。ある人は手の施しようのない痛みゆえに命を絶つ。心臓病や首の骨を折って死ぬ人よりも、そのような人たちがより手厳しい審判を受ける理由はなにもない。

なかには、比較的健全な状態の人たちが意識的に命を絶つことを決心することがある。ある人たちには、これは長くつづく逆境への全面的降伏であり、ときには、保険金が家族に残せる唯一のものだからだ。また、あまりにも困難だったり、受け入れられない状況にこれ以上対処できないと結論づける人たちもいる・・不倫関係や金銭的、政治的腐敗が発覚されたり、仲間からの信用を失ったのかもしれない。このような考え抜いた末のケースも非常に悲しい。これらの人たちも本当は地球での生を全うしないことなど望んでいないのに、彼らにとってのすべてがどうしようもなくなって、死だけが唯一の救う薬だと思ってしまうんだ。

それがどのような理由にせよ、自殺した人たちは、すべての魂たちと同じように、アカシックレコードを見直して、自己査定とつぎの転生を計画することになる。彼らは選んだにもかかわらず完遂しなかったことを繰り返すことになるので、確かに学びは増えるけれど、自殺したからと言って、天罰や重たいカルマを背負うことはない。意図、あるいは動機こそがすべての自己評価を決めるための基礎なんだ。だから、この領域では、これらの人たちがほかの人たちよりも厳しく自分たちを評価する必要はない。


ありがとうございます、お母さん。さて、ヨーロッパの読者たちがたくさんの都市にいるイスラム人たちについて不安を書いてきています。愛する人たち、彼らはあなたたちに不安をもたらすためにそこにいるのではありません。彼らは魂レベルの導きにしたがって、新しい土地と文化と思想に馴染もうと来ているのです。まったく異なる新しいものに順応するのは一夜でできることではないので、彼らが親しんでいるもの・・彼らの親類、着るもの、宗教的伝統・・に執着するのは自然なことです。彼らだけが選んで移住してきているわけでもないのですが、とくに目立つのかもしれません。そして、どの人々にもあるように、中には間違いを起こす者たちもいて、その地域に長く住んでいる人たちは、そのような行為を新しく入って来た人たち全員のせいだと誤ってするのです。

あらゆるイスラム人たちを、イスラム国と同じ過激な宗教という眼で見ている読者たちに、僕たちはどうかそうしないでとお願いします。あなたたちの中には、敵は殺してもよいとか、それを推奨さえしているコーランの一節を引用してきた人たちもいました。聖書にも同じような内容のものがあり余るほどあります。両方の本はその信仰本来の教義を恐ろしいほどに改ざんしているのです。

例えば、聖書にある“罪の中に生まれ”という言葉・・もちろん、イエスが罪人たちを救うために死んだという話は言うまでもありません・・は古代のイエスの教えの記録とは嘆かわしいほどに違っています。“罪”とは判断を誤っただけのことであり、唯一の誤りとは、自分自身やほかの人の魂の成長を妨げることだと、彼は教えました。 

あらゆる魂の成分は創造主の純粋な愛のエネルギーの要素であり、これがあらゆる新生児の成り立ちです。人々が幼年期からずっと宗教の名の下で憎しみ、復讐、殺人を教え込まれると、彼らはイスラム国のような集団に引き寄せられます。そのように、過激派組織は宗教的信条に基づいて行動していると思っていても、そうではないのです。それがどれほど誤っていても、彼らの信条を力づくで守り、広める権利と責任を叩き込まれた結果の精神から行動しているのです。

それはキリスト教もほとんど同じでした。宗教裁判、十字軍、ラテンアメリカのカトリック・コンキスタドール(征服者)による先住民たちへの迫害を考えてみてください。その後には、アメリカ合衆国となった土地で、キリスト教徒たちが先住民たちの暮らしの糧を奪うために野牛の群れを全滅させ、先住民たちを虐殺と病気によって減らしました。

愛するファミリー。あなたたちの宗教はすべてスピリチュアルな真理の純粋性の中に始まったのですが、そのはじまりからある程度離れてしまいました。その乖離がもっとも大きいのがイスラム教とキリスト教です。代々にわたって延々と積まれたカルマのほとんどは、地球の暮らしの中でもっとも対立的で破壊的な側面である宗教の名の下に行なわれたことに起因しています。 

世界の変容とスピリチュアルな再生のプロセスが、はるか昔に闇がこころと精神に負わせたことに終止符を打っています。それは、違うものは何でも恐れ、見下し・・恐れるものを破壊し、劣ると見なされる違いを軽蔑、差別しなさいということです。このことを人類の中に確実に根付かせるために、闇は違いを意味する表示の概念を植え込みました。そのようにして、人々の宗教、国籍、文化、民族、政治、政府、思想、人種、職業、伝統、経済、社会での立場によって、社会がその人を評価する・・そしてよく審判する・・ようになったのです。
 
僕たちはあなたたちをライトワーカー(光の使者)と呼んでいます・・それも、そうでない人たちとの違いを意味する表示ではありませんか?そうですね。でもほかの魂たちと区別しようという意図はまったくありませんし、ましてや、より優れているということでもありません。ライトワーカーとは自分が誰であるか・・神と分け隔てできないその分身であること・・を知ることであり、自分がやっていること・・光を送ることで、地球の人々をそのような対立的な束縛から自由にし、あらゆる人たちが平和に、敬うこころをもって、協力して、調和の中に一緒に暮らして行けるようにしている・・を知ることです。この惑星のあらゆる魂たちは光の中に暮らして行くようになるでしょう。そこにはなんの表示もありません。

無条件の愛をもって、僕たちはあなたたちのアセンションの道程の脇にいつでもいますよ。
               
          _____________________________


愛と平和を

スザンヌ・ワード著
原文:Matthew's Messages
訳文責: 森田 玄

(転載自由:原典を明記して頂けるとうれしいです。)



月曜日, 9月 01, 2014

『ぐるりおーざ どーみの』

どのような宗教的布教や実践にも音楽的要素はかならず存在するようです。古代の文字がない時代には、ひとびとのこころや精神に直接響く音楽的な要素が不可欠だったことでしょう。

16 世紀、日本に始めてキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルは、もちろん日本語の読み書きは自由ではなかったはずですから、当然聖歌をまず教えることで 最大の伝道的効果をあげようとしたはずです。そして彼の生まれ故郷である北部スペインで当時歌われていたグレゴリア聖歌を日本人教徒たちに教えたので しょう。

その後キリスト教が禁止され、隠れキリシタンになったわずかな数の人たちが密かに数百年にわたってその聖歌を現代にまで代々伝えてきたという事実を知って驚きました。しかもその原曲の「O Gloriosa Domina」は当地ではもう歌われていない”失われた聖歌”だというのです。

そのことについて、JUMP(平和省プロジェクト)のメンバーである漫画家の西岡由香さんが最近平戸を訪れ、このことを掘り起こしたときの感動を以下のように伝えてくれました。


平戸、ザビエル教会のザビエル(関一郎音楽日誌より)

          *******************


みなさま

こんにちは。
この感動と衝撃をどう伝えたら良いのでしょう・・
一昨日、平戸に演奏会を聴きに行ってきました。
今も平戸におられる隠れキリシタンの方々が、「唄オラショ」といわれる
祈り唄を、特別編成の合唱団が、その原曲であるグレゴリオ聖歌を、
同時に歌うという初のこころみ。これは行くしかない、と片道3時間半
かけての一泊旅行でした。

1550年、ザビエルがキリスト教を伝えた平戸島では、多くの島民がキリシタンに
なり、特に隣の生月(いきつき)島では全島民が入信します。禁教令下で領主が
亡命したり、多くの殉教者をだしながら人々は潜伏して信仰を伝え続けました。
明治になり、ようやく禁教令の高札は撤去されます。一人の宣教師もいない
約270年の間に、キリスト教は神道や仏教が入り混じった土俗的なものに
変容していましたが、生月ではカトリックに戻らず、先祖代々の信仰を
そのまま受け継いでいる「隠れキリシタン」と呼ばれる人々が現存します。

「オラショ」と呼ばれるラテン語の祈りは、紙に書くと見つかったとき
申し開きができないので全て口伝で伝えられました。学べるのは「悲しみ節」と
呼ばれる四旬節の46日間のあいだだけ。覚えられなければ翌年に持ちこし。
すべて唱えるのに40分かかるものだったそうです。
オラショには唄もありました。「らおだて」「なじょう」「ぐるりょーざ」と
呼ばれるものです。
かつて音楽評論家の皆川達夫さんが生月を訪れたとき、この唄オラショに
衝撃を受けたそうです。「どこかに元の唄があるに違いない」。執念をかけた
皆川さんはヨーロッパを訪ね歩き、7年かかって「ぐるりょーざ」の原曲
「オ グルリョーザ(はえある聖母よ)」をさがしあてました。
それは1500年代、イベリア半島のいち地方で歌われていた聖歌でした。
その後歌われなくなり、グレゴリオ聖歌集からも消えていた「失われた聖歌」
だったのです。
おそらく、その地方出身の宣教師が450年前に生月の人々に伝えた歌が、
生月の隠れキリシタンによって歌いつがれていたのでした。
驚いたローマのヴァチカンによって調査が行われ、その成果が確かに存在して
いたことが確認されました。

説明が長くなりましたが、一昨日、平戸でこの唄の指揮をしたのは、
ひいおばあちゃんが生月出身という、女性指揮者の西本智美さん。
青い着物で正装した、生月の隠れキリシタンの男性5人が、歌う、というより
吟じはじめました。
ぐるりよーざ  どーみの  いきせんさ  すんでら  しーでら
同時に始まった、合唱団のさざ波のような歌。
グロリオーザ  ドミナ  エクセルサ  スーペラ  シーデラ

仰天しました。両者のメロディがほとんど同じだった・・!!
口伝で、暗記して、この繊細な中世ヨーロッパの聖歌を、450年こうして
伝えつづけられるものなのか・・これが人の力か。これが人間の力なのか。
水をうったように静まり返った会場。私はこの日、奇蹟の証人になって
しまいました。
島の館、オラショ等唱える部屋(関一郎音楽日誌より)


この歌を口ずさんだ宣教師の名前も、歌も、ヨーロッパでは忘れられていた
けれど、波濤を越えた島国の人々は、忘れなかった。
宣教師の敬慕の念とともに伝え続けた。
弾圧に耐え、やがて訪れる信仰の自由を待ち続けた人々の声が、重なり合う
メロディの向こうから聞こえた気がしました。
「パードレ、わしら、守りぬきましたばい」。

西岡由香

      **********************

由香さんの生き生きとした文章から「ぐるりおーざ・・・」の静かな唄声が聴こえてくるようです。

この九州平戸の生月に奇跡的に生き残った中世グルゴリオ聖歌について興味が湧き少し調べていたら、尺八の故横山勝也師の門下である関一郎氏のサイトに 出会いました。そこにも 「オ グロリオーザ ドミナ」との体験が、”歌オラショ「ぐるりおざ」とグレゴリオ聖歌「O Gloriosa Domina」そして「フランシスコ ザビエル」への旅”というタイトルの日誌として掲載されています。音楽家としての分析的なコメントがあるのでとても 興味深い内容です。