2011年3・11原発災害直後に郡山市に対して提訴された福島の子どもたちの集団疎開裁判については、これまで何度かこのブログでも紹介しています。原告側弁護士の井戸謙一さんは、2006年志賀原発差止めという画期的な判決を下した裁判長として知られています。以下は井戸さんから転送されてきた中村純さんという京都に避難している詩人の作品です。私も深くこころを動かされたのでここに紹介させてください。
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新しい人たちに
あなたたちに詫びなければならない
素足で歩ける大地
思い切り倒れ込める雪原
せせらぎに飛沫をあげて歩く浅瀬の川
木漏れ日にふり仰ぐ森
色とりどりの落ち葉のプール
大地のエネルギーを蓄えた安全な作物
それらすべてを奪ってしまったことを
あなたたちに詫びなければならない
私たち大人の無知と無自覚と愚昧の結果
薄汚れた札束と引き換えに失われた日々
きらびやかな電飾の嘘
オール電化の指一本で回す生活
セシウム四百九十ベクレルのおしゃれなランチ
美しく盛り付けられた遺伝子組み換えのディナー
あなたたちに詫びなければならない
あなたのいのちの遺伝子が傷つき
あなたの体からセシウムが検出され
あなたの甲状腺が腫れたこと
私たちにできるのは
真実を探し続けること 伝え続けること
闘い続けること あなたたちを連れて逃げること
ひとつひとつの野菜や肉や魚を選び
私たち自身の手でくらしを紡ぎなおすこと
もう一度はじめから やり直そう
海が汚れる前の 土が汚れる前の あの日
一番最初の あのときから
じんるいが 間違えたあのとき
原子力発電所が 私たち女の胎内 一番最初のいのちの源まで
まっすぐに 直進を始めた あのとき
中村 純
詩集『3・11後の 新しい人たちへ』2012年9月30日刊より
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